まさかの続編です。こちらからどうぞ。
革命、逆回転。わたくしが鼻を封じた朝
わたくし、本日またひとつ、鼻にまつわる革命を体験いたしました。いや、正確には、革命を“巻き戻した”のかもしれません。
あれほど誇らしげに生み出した「ノーズキャンセリング」……。
今度はそれを、逆回転で使ってしまったのです。
山手線の「これは……」そして鼻が退避を始める
場所は山手線の車内。わたくしは、ぼんやりと窓の外を眺めておりました。夜行バス明けの身体に都会の空気が染みこみはじめる時間帯。
そして、それはふいにやってきたのです。
「ちょっとこれは……」という、におい。
誰のとは言わない。というか、言えない。においに責任を求めるのは、野暮というもの。
でも正直に言えば、わたくしの鼻が、「帰りたい」と言いはじめました。
ノーズキャンセリングを“逆に”使ってみた
そこで、わたくしは思い出しました。数時間前、自ら名づけたあの新概念。
ノーズキャンセリング。
そう、イヤホンを外した瞬間に鼻が目覚める。それならば、その逆もまた可能なのでは?
鼻の目覚めを封じるには——もう一度、耳をふさげばいい。
そう思い立ち、わたくしはおもむろにBOSEのノイズキャンセリングイヤホンを装着。
その瞬間、不思議なことが起きました。
においが、すうっと消えたのです。
音と一緒に、空気の情報が引っ込んだ。鼻も耳と連動して、静かになる。
これはもう革命どころか、感覚の魔法でございます。
便利すぎるその力に、わたくしは震えた
しかし。ここで、ふと、思ったのです。
「これ、便利だけど、めちゃくちゃ危険じゃない……?」
たとえば、ガス漏れ。たとえば、煙。たとえば、なんだかわからないけど死の予兆って、においでくることもあるじゃない。
そんなときに「え〜今日鼻OFFなんで〜」なんてやってたら、わたくし、BOSE聴きながらあの世行きですよ。
最後の曲、なんだったかしら。そんな遺書、ちょっとオシャレすぎやしませんか。
鼻を封じるとき、命も封じてしまうかもしれない
だからわたくし、ここに誓います。
逆ノーズキャンセリングは、非常時使用限定。鼻を閉じてよいのは、「これは……」ってときだけ。
それ以外は、ちゃんと世界のにおいを嗅いで、生きていたい。
わたくしたちの感覚は、快適さのためだけじゃなく、命のセンサーでもある。
だから今日も、時々イヤホンを外して、鼻と仲直りしながら、世界の匂いを聴こうと思います。