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ヘビとミイラとうんこ
子供の頃、ものすごく大きなヘビを見た記憶がある。少年ケニヤに出てきたダーナみたいな、乗れちゃうくらいのサイズのヘビ。動物園で見たのか、ガラスの向こうにそのヘビはいたような気がする。
いつまで経ってもあのヘビのことが忘れられなくて、また見たいと思い、大人になってから調べたらそこまで大きいヘビはいないことがわかった。
でもそのヘビを見た記憶はとても鮮明で、色とか鱗の感じとか今でも思い出せる。とはいえ視界のほとんどがヘビだったくらいとにかく大きなヘビだったから、まわりのことは覚えていない。
もう少し大きくなってから…小学生くらいなのかな。ミイラがずらりと並ぶ博物館に行った時のことがあまりに衝撃的で忘れられない。さっきの蛇じゃないけど、今でも鮮明に思い出せる。ぐるりと視界中に見えるミイラ。とにかくいろんなミイラがずらりと並んでいた。
その話を大人になってからした時にその博物館を調べてみたら、なんとミイラの博物館は実在していた。ただしその博物館があるのはメキシコ。子供の頃にメキシコに行ったことなんてない。しかも記憶していた博物館にはミイラがもっと上下にずらりと並んでいた。あの記憶はなんだったの…。
そんなわけのわからない記憶をあれこれ保持していながら、高校時代に先生に怒られたこととか全然覚えてなくて、久しぶりに会った友達と思い出話になって「ほりたあの時めちゃ怒られてたよねwww」みたいなこと言われても1ミリも思い出せなかったりもする。
記憶とはなんなのか。
わたくしはお風呂に入るとき、いつも変な緊張感がある。「お風呂でうんこもらしたらどうしよう」という変な焦りのような後悔のような気持ち。でもこれまでにお風呂でうんこもらしたことはないような。ないよね、ないはず。ないない。
でも不思議ともらした情景が浮かぶというか天天むしろ浮かんでいたのはうんこ。そう、お湯の上にぷかぷかと浮かぶうんこ。うっかりお風呂でうんこしちゃってそのうんこがぷかぷか浮いてるビジョンが見えちゃってしょうがない。
でもこれまでにお風呂でうんこしたことはない。
いつだかそんな話を母美世子にしたら、「あんた赤ちゃんの頃お風呂でうんこしたことあるよ」という、衝撃の過去を聞かされた。しかもそのうんこは湯船でぷかぷか浮いていたとか。
そんな赤ちゃんの頃の記憶を持ち続けて、お風呂の度に緊張していたのかわたくしは。赤ちゃんながらに「やっちゃった…」って思ってたところが我ながらかわいい。いいよいいよ、赤ちゃんなんだもん。
あ、でも。うんこの記憶は本当だったから、蛇とミイラももしかしたらもしかするのかも。