「ハリー・ポッター」シリーズや「魔女の宅急便」など、誰もが読んだことあるであろう児童文学の挿絵を多く手がけている、富山県高岡市出身の挿絵画家、佐竹美保さんの原画展が富山市ガラス美術館で現在開催中です。
それにあわせて、佐竹さんが富山にいらっしゃっていて、そんなタイミングでむがじんはインタビューをさせていただけることになりました!
しかも!「ラナと竜の方舟」の著者、新藤悦子さんもご一緒に!なんという奇跡!
あの感動を佐竹さんと新藤さんに直接伝えることができるなんて。
もうそれだけでも奇跡のような出来事でしたが、さらに上を行く奇跡が開幕から起こりましたのでまずはそちらからご覧ください。
高岡市万葉歴史館に原画を持ってきてくださったタイミングでのインタビューだったので、原画にも触れ、直接詳しいお話まで伺うことができてからのインタビューになりました。高岡市万葉歴史館の田中さん、本当に貴重な機会をありがとうございます!!
原画についてのお話が伺えただけでもう至福……な勢いでしたが、そのままのわきあいあいとした流れのままインタビューさせていただけることに。
(インタビュー撮影:冨田実布)
まさかのボンバージャケットが……
この日、わたくしほりたみわは通常通り己の作品を身に纏っておりました。昨年末からの個展で制作しました「いぬとかみさま 世界」のボンバージャケットです。


!!!本当ですか?

竜の……似てるでしょ?色味っていうか。


確かに!ちょっと着てみてくださいこれ。

すごい!すごい!そんないや、いいなこれ。


すごい!可愛い!それも可愛いと思う。すごいお似合い。すごい似合ってる。新しい佐竹さんだよ!

可愛い!

ひゃあ!嬉しい!!じゃあ、これ着て帰ってください。

ええ、嘘!?

本当に本当に!

いやいやいや、買います!

ややや!!これ差し上げます!といいますか、お古でいいですか?

うん、大丈夫。わあ、ありがとうございます!足りなかったら後で振り込みます。

いえいえ、とんでもないです!本当に。いや、じゃあじゃあ、お金いらないので弟子入りさせてください。実はわたくしイラストレーターなんですけれども、絵本を出したいと思っていて。佐竹さんの作品を拝見して構図の素晴らしさに感動しまして。

ああ、本当?はい。
まさかのあっさり快諾!!!
お金いらないから弟子入りさせてくださいという、むしろとんでもない要求をしてしまったわたくしですが後悔はしておりません。(佐竹さんが後悔していませんように……)
原画展ではサインがもらえます


いろんなことを伺いたいんですが……まずお二人にお伝えしたいのは、今回この「ラナと竜の方舟」を読んですごい感動したということです。めちゃくちゃ泣きました!!

絵の力に助けられた。ねえ。本当なんか本当に。もう本当に嬉しい。ええ。

実は昨日こっそりと原画展に伺いまして。

あ、そうなんだ。ありがとうございます。

で、しかもサインしていただけるっていうのを、会場で知ったので、うわあ!本持ってくれば……と思って。でもこれ今日持ってったらもしかしたらと思いながら持ってきたんですけど。
原画展の初日(2/22)と最終日(3/23)に佐竹美保さんが在廊し、お持ちの本にサインをしていただけます。

いやあ、ありがとうございます。

私も後でサインしていただこうと思って。ちゃんと筆ペン用意してあります。

ああ、じゃあやっておきましょう。

やった!ありがとうございます!!

佐竹さんはね、サインが豪華なのよ。絵が入るから。

そう、それで最初これを出した時に一緒にサイン本を作って、最初は結構こったものを描いてたんだけど、もう全然時間がなくなっちゃって。

おおお!それは贅沢ですね。昨日伺ってその原画がまた素晴らしくて。あんなにも素晴らしい展示をありがとうございます。

なんか昨日すごかったね。

すごかったです。人がたくさん。あれが無料で観れるっていうのがとんでもないですよね。うわあと思って。

美術館側じゃないから。ねえ。
まあ1ヶ月あるから、みんな穴のあくほど見てもらって。画集ではなかなか味わえない、こういう世界もあるんだっていうね。
「原画」というものについて

原画ってだんだん無くなってきてるんですよ。みんな今プロの人ってデジタルで描くから、さっき見たようなそういう原画っていうものがもうない。原画はもうすごい贅沢になる。

ですよね。私もイラストのお仕事はデジタルでやっちゃうんですけど、でもやっぱりアナログの持つエネルギーっていう素晴らしいですよね。で、やっぱアナログやりたいなと思ってやり始めて描いたのがこの作品なんです。(と作品集とボンバージャケットについて説明)

はい。明日じゃこれ着ますね。明日これじゃなくて黒い厚めのエプロンワンピースなんですよ。黒黒黒で。だからその上にこれ着て。

うわあ!すごい。ありがとうございます!!いつでも着てください!

嬉しい。じゃ、明日聞かれたらこれは「むがじん」のほりたさんの作品って言っていいの?

もちろんです!嬉しい。こっちがめちゃめちゃ嬉しいです。びっくり、こんな展開になるなんて。

すごい場面に立ちあっちゃう。奇跡だ、奇跡だ。すごい。
大興奮の中、始まるインタビュー

で、お話を伺いたいことが色々ありすぎたんですけど。
私も高校はインテリアなんですけどデザイン科で、大学卒業後はイラストレーターになっていて。しかも佐竹さんは75年に卒業されてますが、わたくしが生まれたのが75年で。勝手にいろいろと繋がりを感じてうれしくなってたんです。

へえ!そうなの?うわあ。去るものがあれば生まれる。

イラストレーターになって改めて佐竹さんの本を読んでいて感動したのは「構図がすごい」ってことでした。
この「ゆきおんな」もそうですけど、全部構図がとんでもなくて……どうしたらこんなドラマティックな構図が描けるんだろうっていうのが、イラストレーターとしての疑問でした。構図はどのようにして決めてるんですか?

結局、イラストレーターというか挿絵中心でやってきてるんで、挿絵って1冊につき10点とかになりますよね。10何点と、同じ構図だとつまらないじゃないですか。

そうですね。うっかり同じ構図になりがちだったりします……。

それで、中の絵をやるとしたら、さっき言ったみたいに始まりと終わりにこだわったりとか、そうするとどうしても構図しか手が無いんですよね。
上から下からってのは想像力しかないですね。想像力完璧な人は完璧に描くんでしょうけど、完璧じゃないから何となく絵になるんですね。

うん。多分そうだと思う。でもね、それをやってくれる人はあんまりいないと思う。
今、挿絵に関して言えば、わりと片方のページだけ1枚絵で頼まれた、でしか描かない人の方が多いんじゃないかと思うのね。
でも佐竹さんの場合は、ちっちゃいのも描いてくれるし、この見開きで遊んで描いてくれる。
私、佐竹さんと組んで3作目なんですけど、最初に「アリババの猫がきいてる」を描いてもらった時に、皆で食事する場面があって。
挿絵にあわせて文章を変える!?


木の枝が伸びて、食事をしてるっていう場面を見開きで描いてくれた時にね、文章が絵の上に載るんだけど、その木の枝がすごいダイナミックに伸びるから、それで私文章変えたもん。

へえ!すごい!うわあ、すごい!

描きたくなっちゃうんですよね。

そうそうそう。そんなことをしてくれる人はいない、そんな絵を描いてくれる人は。うん。だからこれすごいの来たなと思って。「どうします?」って編集者から相談されて、「いや、変えます変えます」って言って。

へぇえええ!

いや、新藤さんわりと柔軟ですよね。

そうそうそう。あの絵がね。やっぱり挿絵って特に昔の翻訳物のってそうだったんですよ。絵がちゃんと生きてたっていうか、すごい点数も多かったし、挿絵としての魅力があったっていうか。
で、そういうのがだんだん無くなってきて、色々発注の仕方とかあるのかもしれないけど、この1枚絵を何枚お願いしますみたいな感じになってるんじゃないかと思うんですよね。

点数になっちゃって。

点数になっちゃって、それで文章の中にちょっと小さく入るとか、この上の段は文字だけど下にちょこっと並べて入るとか、そういうようなことをもうやろうとしないんじゃないかと思う。

だからそういう意味ではその「魔女の宅急便」は私の絵が最初なんですよ。
これぐらいの絵ぐらいで、まだ下絵も何もなしで……スクラッチでやってるから下絵できないんですよね。

ああ、そうそう。スクラッチ、あれすごいなって思って。

で、原稿もらって、これ絵をちょこちょこちょこ描いて、私のその絵に合わせて文字組んでいくの。だから相当編集者は大変だったと思う。

そうそう、編集者も大変なのね。編集者もここに1枚あった方が楽っていうか、文章は文章で絵は絵でできるから。
でも本当は絵と文章が一緒になってる方が絶対面白いし、楽しいし、挿絵の魅力っていうのもあると思うんですよね。そういうのをこちら側からお願いするわけにもいかないんだけど、佐竹さんは言わなくても全部やってくれるから。いくらでも描いてくれるから。

楽しまなきゃ、ねえ。せっかくもらった仕事をね。すごい楽しくやってます。ありがとうございます。……で、何でしたっけ?
まだまだつづきます!!

大興奮の中始まったインタビュー。気づけばとんでもなくたくさんお話を伺っておりましたので、今回はここまで。
佐竹さん、新藤さん、素晴らしいお話をありがとうございます!!お二人だからこそ聞けた、とても貴重な内容でした。
突然ぶった斬りますが、まだまだまだまだ続きます。どうぞお楽しみに。
これほりたさんの名刺?これも今日着てるのもほりたさんの?欲しい。それ欲しい。そういうの好きなんです。