湯川真紀子のコトワザ・ジャイアント
お笑い芸人、湯川真紀子が諺や慣用句など、こすられまくった喩え言葉についてニヤニヤしながら書いています。
「蛇足」
昔、楚の国で、ちょっとしたお祭りがありました。
偉い人は、召し使いたちにお酒を振る舞いました。
「やったーーーー!!!酒じゃ酒じゃーーー!」
「ちょっと待って。これ、少なくない?」
「うおー、マジじゃーー。少ないのぅ」
「こんなもん、みんなで飲んだら全然足りんわ」
「いやー、酒っちゅうのはみんなで呑んだ方が楽しいからのぅ」
「どうじゃ。勝負をして、勝った者が独り占めするというのは。」
「おおー。ええのぅ」
「でも、酒っちゅうのは、みんなで・・・」
「どんな勝負にしようかのぅ」
「じゃんけん、じゃんけん!」
「しりとり!」
「ダウト!ダウト!」
「ダウトなんか永久に終わらんわ」
「ダウトが終わったところなんか、見たことないのぅ」
「なあ、酒っちゅうのはみんなで・・・」
「一番最初に屁をこいたやつが」
「すかしてしもうたら不利じゃ」
「ミも出かねん。」
「みんなで呑もうや・・・」
「一番長く「あー」て言えたやつが勝ちじゃ」
「せーの、」
「あー」「あー」「あー」「あー」
「やった、ワシの勝ちじゃ」
「裁判長、こいつ、不正をしとりました。途中で息を吸うとりました」
「ぐっ・・・」
「お絵描き選手権」
「お絵描き選手権?」
「一番早く絵を描いた人がお酒を飲める選手権でーーす」
「お題は?お題お題お題――ー!!」
「ゴジラ!」
「そんなもん、画数が多すぎるわ!もう、一刻も早く呑みたいんじゃ。」
「わしのノドももう我慢ならんと言うとる。」
「モウ、ガマンナラン!」
「じゃったら、蛇はどうじゃ。」
「なぁ、みんなで呑も・・・」
「用意、ドン!」
蛇
「ウェーイ!ワシが一番じゃあ!」
「ええーーー!」
「お前ら、まだ描き終わらんのか。ワシなんか、お前らが書いてる間にこの蛇の額に肉という字だって描き足せるもんねー。」
「な、何ぃーーーっ?!」
「さらにさらにーー、おリボンも描き足せるもんねーー」
「うぐぐぐぐ・・・」
「腹筋六つに割っちゃったりしてー。イェーイ、シックスパックーー」
「・・・・」
「なんとなんと、その上、足まで足しちゃいましたーーー。イェーイ!」
「ふはははは。そこまでーーー!はーーーい、蛇に足はあーりーまーせーんーーーー!だからこれは蛇じゃありませーーーん!」
「うっ・・・ぐぬぬぬぬぬ・・・・」
「イェーーーイ!だから、このお酒は、みんなで呑みましょーーー!」
「そういうわけにはいかん。」
「なぬーーー」
「もうこうなったら勝ちたいんじゃぁっ」
「勝負、勝負、勝負ーーー!!!」
そして世が更けるまでケンケンゴウゴウ。
そして、わたしは今、百足の蛇足について考えているところです。
これもまた、蛇足。
イラスト:ほりたみわ