湯川真紀子のコトワザ・ジャイアント第3回「逆鱗」(げきりん)

逆鱗

湯川真紀子のコトワザ・ジャイアント

お笑い芸人、湯川真紀子が諺や慣用句など、こすられまくった喩え言葉についてニヤニヤしながら書いています。

「逆鱗」

逆鱗

最近ハマっている一人遊びがあります。

それは、「初見の感じで」。

例えば、「初見の感じで」サルカニ合戦を考えてみる。

カニがおにぎりを持って歩いている。…は?カニが?おにぎりを?…はいはい、まあ、とりあえず受け入れてみましょう。で?サルが?…サルが柿の種をぉっ?!で?で、どうなるの?ふむふむ、おにぎりは食べたらそれでおしまいだけどぉ?柿の種はぁ?土に埋めればやがて柿がたくさんなるでしょう。うん、まあ、そりゃそうだ。で?…おにぎりと柿の種を交換?え?おにぎりと柿の種を?サルとカニが?サルとカニがおにぎりと柿の種をぉっ?

ちょっと待って、なにこれ!なにこの発想!もう、なんだか設定が込み合いすぎているではないか!

これだけですぐに深夜2時を回ることができる。

この遊び「初見の感じで」に、ぴったりな言葉が、「逆鱗」。

「逆鱗」

龍には、喉のところに一枚だけ反対向きにはえている鱗がありまして、普段は温厚な龍がその鱗を触られると激怒するという。

なにこの設定!しかも込み合った上に飛びすぎている。

そもそも、龍ってのが空想上の生物じゃないか。その空想上の生き物に一枚だけ反対向きの鱗がはえてるって、どういう発想なんだ。…その発想力、ちょっと欲しい。でも、それだけじゃ共感は得られない。しかし、それを触られると激怒する、って設定が乗ることによってなんかちょっと説得力が出てくるじゃないか。

昔々、あるところに龍がおりました。

龍ってね、ヒマなんですよ。だってほら、なかなか呼び出されないし、あんまり姿を見せてしまっては価値が薄れる。龍のインフレ。ですから、毎日ヒマをもてあましておりました。

ある日、龍は「逆鱗」というものがあるという話を聞きました。ヒマだからウィキペディアでも見ていたのかな。で、鏡を見てみると、確かに喉のところに一枚、逆さ向きにはえている鱗がある。

なるほど、これが俺の逆鱗か。こんなものがあるなんて、考えたこともなかった。よし、ひとつ、触ってみよう。しかし、なんということでしょう。龍の前足はとても短く、逆鱗まで届きません。

皆さんも、自分で自分のヘソを舐めてみようとしたことがあるでしょう。あの感じ。ないなら今すぐやってみればいい。

こんなに届かないんだったらしっぽの先で、と思うのですが、一枚の鱗をとらえられるほどにはしっぽは器用ではなく、たまさかとらえようとすると、その喜びでしっぽをブンブン振っちゃう。

ここぞというところで呼び出されちゃったりもする。

あーあ。

こんなことを考えていると、すぐに夜が明ける。

…わたし、龍よりヒマなのかもしれん。

【逆鱗】天子の怒り。また、目上の人の怒り。「―に触れる」

イラスト:ほりたみわ

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