やっほー、菊池あきです。天才写真家です。
カメラオブスクラ「朏」の販売を始めたので、紹介するよ。
これだー!
カメラオブスクラって何か?何がすごいのか?
そのへんはこれを見てくれ!賢くなるぞ、知らんけど。
因みに、朏シリーズの最新作「朏 二式」は
【アート・イン・かいにょ苑】(2023/4/27―4/30)でお披露目されます。来てくれよな!
1. カメラオブスクラとは
カメラオブスクラは、ルネサンス期に発明されたとされる、今のカメラの元となった装置だ。
写真を撮ることはできず、記録するには描きうつす他ない。
1-1. 西洋絵画はこう言った
西洋絵画における、世界を変えた発明。その一つが遠近法(線遠近法)だ。そしてカメラオブスクラは、その象徴とも言える。
順を追って話そう。
遠近法というのは、カメラオブスクラに映るのと同じ構図の絵を描く方法だと言っていい。そして、その構図で描かれたものは正しい遠近感をもっていると考えられている。それが生まれたのはルネサンス時代で、今では世界中に広まっている。中学校の美術の教科書にものっているし、漫画を描くにも重要なスキルだ。
けれども、これに従って描かれた世界というのは目で見るものとは一致しない。物の大きさも違っているし、視覚というのは絵画のように一度に全体を見渡しているわけじゃない。
つまり、西洋絵画は実際には見えない風景を、正しい見え方として広めてしまったわけだ。
1-2. そして写真は生まれた
カメラオブスクラを眺めて描き写すのには時間がかかる。そして、精巧に行うのには技術も必要だ。スクリーンに映った光景を、自動で簡単にコピーできれば……。写真がうまれたのは、そういう願いからだったとも言われている。
写真が誕生したのは19世紀。1839年、フランスでのことだとされている。それから200年たらずのうちに世界中にひろがり、動画も含めぼくたちの日常に欠かせないものとなっているのは周知のとおりだ。
2. なぜ作ったのか
2-1. 撮影できないカメラを持とう
地元のレストランで写真教室をしたときのこと、馴染みのウエイターに聞いた話。
「ネットに上げるのか、パスタがのびてもずーっと撮影してる人がいたんですが、自分のとこの料理なのにマズそうに見えてしまって……」
昨今の写真文化への違和感が、はっきりと形となった気がした。
おいしそうな料理に、うつくしい光景にカメラを向けるとき、ぼくたちはきっとカメラを見ている。目の前の現実を肌で感じることなしに。
ぼくはこれに危機感をもっている。ぼくらが感動している物事は今ここにあるのに、ぼくらはその表面的な見かけをコピーすることに一生懸命になっている。そしてその何パーセントを、後から見返すだろう?
写真家にとってもそれは同じだ。目の前のものを感じ取り、理解しようと試みて、写し取れるものなどわずかだと知りつつもシャッターを切ること。それなしに、良質な結果は期待できない。
まずはそれに目を凝らすことこそが大事なんだ。ゆったりと眺める「目」をこそ、ぼくらは持つべきだ。
2-2. 歴史の舞台裏
先に述べた通り、カメラオブスクラは写真や絵画のみならず、ぼくたちの世界観を作り上げた装置のはずだ。なのに、その存在すら忘れ去られている。もう、そんなものがあったことすらぼくたちは覚えていない。
根のことを考えずに、きれいな花を咲かそうとするようなものだとぼくは思う。
どうしてそうなっているのか、どのようにしてこうなったのか、それを考えずに目の前のものにばかり取り掛かるのは難しいのに、ほとんどの写真家や画家、あるいは社会を論ずる人は、そうなってしまっているんじゃないか。かつてカメラオブスクラという装置があったことを知り、手に取る機会を増やしたいと考えている。
2-3. 僕たちの見る嘘
ゲームをしていて驚いたことがある。
水中に飛び込んで、また浮上したシーンなのだが、明らかにレンズについた水滴が描画されていたのだ。また逆光のシーンでは、レンズに由来する光の連なり、いわゆるゴーストが描かれていた。
これが違和感のないリアルな表現なのだとしたら、ぼくらの視覚はかなりカメラに浸食されているようだ。
肉眼で見ているものは、カメラを通した映像とはかなり異なっている。そもそも、一度に180°近くを眺めわたすなんて、通常のカメラには困難だ。
肉眼から見ればカメラの映像は嘘だらけだし、肉眼の映像は、物理的にはごまかしだらけだ。お互いの嘘を補い合って、ぼくらの視覚文化は形作られている。
改めてカメラを見ながら、100年後の「リアル」に思いを馳せてみよう。
3. 楽しみ方
3-1. 簡単な手順
カメラオブスクラ「朏」の使い方は単純だ。
フードをはね上げて、見たいものにレンズを向けて、上からのぞく。それだけ。
コツとしては、なるべく見たいものより暗いところから見ること。焦らないこと。
3-2. スマホを捨てよ、街に出よう
カメラオブスクラを携えて、外に出てみよう。
次々ととびこんできて、目の前をちらつかせる情報から、しばらく解放されよう。数百年前の視覚に思いを馳せるのもいいと思う。少し異なる世界に身をおくことが、きっとできるはずだ。