【写真×言葉】散歩とスナップ写真の免罪符

天気が良い日はどこかへ出かけたくなる。

しかし、基本的に私はアクティブ志向なインドア派だ。あのコーヒー屋さんへ行こうか、それからちょっと足を伸ばしてあそこの公園へ。それなら花なんかをマクロで撮れる準備もしていくか。レンズはどれにしよう。今から準備して何時くらいになるか、電車で行くか車にするか……と逡巡してはやめてしまうことが多々ある。

好きが高じて写真の仕事をしているからだろうか。どこかへ行く時には必ず写真のことが頭にある。しかし、カメラを持って出かけるのはめんどくさい。持ち歩くには重いし、サイクリングは好きだけど、自転車に乗っていたらいちいち止まって停めてなんてしていられない。

それに、「あ、いま良いな」と思った瞬間を撮ってみても、後から見直したらそうでもなくてお蔵入りする写真もとても多い。写真を撮るために出かけるのか、出かけるから写真を撮るのか。

どちらにしても、私にとっては生活の一部に写真がある。カメラを持っていなくても、気づいたら露出と画角の構成を脳内で考えている。

そんな妄想の中だけで完結してしまいがちな出不精人間でも、たまにはちゃんと行動へ移す時がある。なんといっても、5月上旬の気温は写真散歩にもってこいだった。

散歩の穴場「清澄庭園」

ある晴天の朝、ふと思い立って清澄庭へカメラを携えて向かった。

清澄白河から門前仲町へかけては好きなカフェやお寺があり、そこら周辺が私にとっては正に庭みたいなもので、移動時間なんかも含めて予定が立てやすい。リュックに水とカメラとスマホの充電器を入れて、カメラとレンズ、そしてマクロ撮影ができるクローズアップフィルターを携えて家を出た。

私が愛用しているSIGMAの28-70mm F2.8 DG DN | Contemporaryレンは、独特のテイストを生み出してくれる。周辺光量が落ちるところが厄介でもあるけれど、軽くて使いやすいわたし好みの一本だ(プロモーションのお仕事お待ちしております)。

左 SONY FE 24-105mm F4 G OSS
右 SIGMA 28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary

庭園の敷地内に自転車を置いて、エントランスでチケットを買う。新宿御苑と清澄庭園と清水寺のチケットは、使った後には捨てるのが躊躇われるくらいには好きだ。

平日の昼間はご近所さんや外国人観光客が数組いるくらいで、鳥も魚も気持ちのんびりしているように見える。園内はそれほど広くないけれど、池の周りにある石を渡ってみたり、名石それぞれの形や質感を見比べてみると時間を忘れる。芭蕉の句碑を眺めるのも風情があって良い。

何度か来ている場所だから、ともすれば足早に過ぎ去ってしまう風景たち。けれど、いつもとは違う写真が撮りたい。絞りは開放で、かつシャッタースピードを高速にしてみたらどうだろう。

ちょうど5〜6月が時期だという紫蘭の花があちこちで群れになって咲いている。ヒダの質感が美しい。

この花を撮る際はSONY FE85mm F1.8レンズにクローズアップフィルターを付けて使用した。軽量でリーズナブルなのに描写力が優れているため、あらゆる撮影で大変重宝している。

水辺を歩き始めると静かに近づいてきてヌッと顔を出してこちらの様子を伺うスッポンは、いつ見ても不気味だ。見た目で相手を判断するのは失礼なことだとは重々承知だが、黒目が小さくて鋭く見える顔つきが苦手だ。

左 ISO1250 85mm F2.2 SS1/1250
SONY 85mm F1.8
右 ISO1250 70mm F2.8 SS1/1600
28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary

苔むしたあたりでは黙々と手入れをされている姿が。こういう方々のお陰で庭園の美しさや生態系が保たれていると思うと有難い気持ちが湧いてくる。

ISO320 70mm F2.8 SS1/500
28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary

いつもより周りをよく見てみる。脚立が無造作に置いてあるのだって、なんか面白いかも。

左 ISO500 70mm F2.8 SS1/500
右 ISO125 70mm F3.2 SS1/500
28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary

キョロキョロ、うろうろ。立ったりしゃがんだり。スナップって地味だし、一見なんの変哲もない場所を覗き込んで写真なんか撮っている人は、側から見ると挙動不審この上ない。だけど、こういう場所は免罪符みたいなものだから気が楽だ。みんな無駄にうろうろしてあちこちに目をやっているもの。

人生はタイミング

この時は分からなかったけど、たまたま写真を見返してみたら思ったよりも好きなテイストだった。自分にこんな写真が撮れたんだと意外な気持ちにすらなった。

ただ歩いて、立ち止まって、あたりをよく見る。ただの散歩で人生って豊かになるんだなと改めて思う。しかも、ついでに写真を撮ったら楽しいんだから良いもんだ。

この時の写真があまりにも自分好みだったから、実はこの日の翌日も調子に乗って清澄庭園へ足を運んでいた。けれど前日とは気温も光の具合も違うので、撮れた写真はそう面白くなかったためにお蔵入りにしてしまった。


写真散歩の面白いところは、そのタイミングでしか出会えない景色があるということ。

ISO100 28mm F2.8 SS 1/2000
28-70mm F2.8 DG DN | Contemporary

思い立ったが吉日。善は急げ。早起きできても、できなくても良い。もっと散歩しながら写真を撮ってみよう。日常が少しだけ楽しくなるかもしれない。もしかしたら、自分が思ったよりも良い写真が生まれるかもしれない。

そんなことを感じながら、今日も引きこもってのんびりお家でこの文章を書いている。

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