朏(みかづき)の限界
手乗りカメラオブスクラ「朏」ももう二式が完成し、かなり満足感の高いものができているように思う。柿渋仕上げの外装、高精度な硝子レンズを用いた光学系など随所にこだわりがあり、そして、それこそが最大の弱点でもある。
作るのにそれなりの技術と時間を要するものだから、どうしても安価に世に送り出すことができない。誰でも手軽に持ち歩けることがコンセプトだったのに、万の桁では自分でもおいそれと手を出せなくなってしまう。そこで、思い切って安価な新型を開発することにした。今回はそんな話。
天才の発想
人間が生きていくには食わねばならず、食うだけでは人は生きる能わず、つまり、人の時間はタダではないのである。カメラを作るのは時間がかかるから、せっせと作っていればいるだけ物は高くなる。
そこで天才たる菊池あきは発想を転換して、作るのをやめた。
カメラは使う側に作ってもらおう。ペーパークラフトカメラオブスクラの誕生である。これは何も手抜きではない。カメラを作り上げるわくわくまで味わってもらおうという、サービス精神の表れなのだ。(という風に表現するといい、とマーケティングの本には書いてあった)
Computer Aided Design
突然だが、ペーパークラフトの作り方ってみなさん御存知だろうか?僕はよく知らない。
よく知らないのに作ると大変なことになる。普段はどんなものでもPhotoshopで作ってしまうのだけど、このソフトはきっちりとした寸法で製図をするのには向いていない。
そこで、うまれて初めてCADソフト(製図ソフト)というものを導入することにした。広大なネットには無数の無料ソフトがあるのだが、その中から「JW-CAD」なるソフトウェアをダウンロード。インストールして立ち上げてみたところ、何が何のボタンさっぱりわからない。
なんとか四角形を描くボタンを見つけたものの、四角形同士をつなげるやり方が見つからない。ここは再びネットの海をさまよい、「初心者向け JW-CADの操作方法」なるサイトを発見。新しい図形を作るたびにページを行き来しながら、やっと試作品を完成させた。
印刷の方法すら解説サイトに頼りつつやっとのことで出力し、試しに作ってみると、意外、スクリーンにはかなりきれいな像が出ている。やはり、努力は人を裏切らない。
そして伝説へ
こうなってしまえばこっちのもの、後は細部を調整し、カラーリングをして完成。そうして色を塗る方法を探したところ、JW_CADにはそんな機能は無い。だって、製図ソフトなんだもの。
全てを諦めた私はPhotoshopを立ち上げて、一からおんなじ図を、無理矢理に描いたのだった。それではお後がよろしいようで。