DJ AKKYの人生は選曲だ!(57)蜂がくれたラブソング――僕がBARBEE BOYSを聴き続ける理由

体温のある音楽

1980年代、音楽にはまだ“体温”があった。いや、音楽そのものが人肌だった。今どきだとスマホでAIですぐにポン!と出てくるような音楽も、それはそれでアリなのだろうけど、当時はデジタル機器が出始めたばかり。高価だったけど実験的に取り入れ始められた頃。

そんな中、BARBEE BOYSはアナログからデジタルレコーディングの移行期に24chデジタルマルチトラックレコーダー/SONY PCM-3324を使ったミュージシャン。だからと言ってデジタルデジタルした人工的な世界ではなく、その時代ならではの“間合い”と“エモさ”がぎっしり詰まっている。聴けば、鼓動が速くなる。あの頃の空気が、熱さがいまも体内に戻ってくるような感覚になるのです。

https://www.sonymusic.co.jp/Music/Info/barbeeboys/bee/index.html

SONY PCM-3324 1台3000万(当時 今なら1億円くらい?)

SONY PCM-3324 1台3000万(当時 今なら1億円くらい?)

鮮烈なデビューと唯一無二のスタイル

1984年、「暗闇でDANCE」で鮮烈にデビューした彼ら。杏子さんとKONTAさんの男女ツインボーカルという唯一無二のスタイル。二人が繰り出す、すれ違いと出会ったときのドキドキを感じさせるやりとり。そして、いまみちともたかさんが描く、男女の駆け引きの物語と曲構造。それを支える超技巧派のベース、ドラム、夜を感じさせるテナーサックス。

恋愛映画のキャスティングなの?というくらいにバランスが最高です。そうなんだよね。バランスです。彼らは一貫して歌うのは恋愛の曲なんです。デビュー曲「暗闇でDANCE」は、今だとコンプラ的にはアウトな 映像シーンが多いけどね

手間のかかる恋と音楽

1980年代後半。当時の恋愛は、今とは比べ物にならないほど“手間のかかる”ものでした。家の固定電話しか連絡手段がなかった時代。電話をかければ相手の親が出るのは当たり前。好きな相手の母親に好かれなければ電話を取り次いでもらえない。

電話できて、待ち合わせの約束をして、当日、駅前や喫茶店で待つ。相手が来なければそれで終わり。電話しても、母親が出て一言。「話したくないって言ってるの、ごめんね」で、さぁそこからどうする?終わる?そこをなんとかする? 簡単につながらないからこそ、ひとつひとつの「会う」が特別で、そこに濃密なドラマがあったんです

そんなドラマが、BARBEE BOYSの音楽の中にあった。他の同時期のバンドやミュージシャンと比べても、会話調の歌詞で “男女の駆け引き」”という類の無い、かつ今でも通じる感情の揺らぎや熱さがあったんだよね。「ふむふむこうやってオトナはなるほどなるほど」みたいな感じ。

僕が高校生の頃、BARBEE BOYSと(他気になる当時のミュージシャン)のミックステープを作っては、好きになってほしい子に渡した。カセットに気持ちを込めて、選曲で想いを伝えていた。今思えば、それもまた、僕なりのラブレターだったのかもしれない。そうやって、言葉にできないことを音で届けていた。その場で言語化するのが苦手だったから。そうこうしてるうちに周りが大学受験で勉強しはじめて、テープを聴く心の余裕とか無くなってきて、でも僕はいっつも音楽聴いて無我夢中で選曲してたなぁ。(無我夢中になったので むがじんにコラム書けるようになったのですが笑)

エモさの記憶は、血を通ってやってくる

それから40年近くが経った。スマホが普及し、あらゆる手段で人とつながれるようになった。でも、その「つながり」はどこか希薄だ。メッセージは即時に届く。でもその速さが、深さを奪っている気がする。熱が伝わらない。余白がない。待つという行為が、なくなってしまった

そんな今、1990年以降に生まれた世代が、BARBEE BOYSの音楽に“エモさ”を感じているのがとても面白い。彼らにとって昭和の曲は、リアルタイムではないはずなのに、どこか懐かしい。と言う。それって、どういうことなんだろう?

小さい頃に両親と一緒に車で出かける際に車中で流れていたとか、母親と娘がカラオケ行って母が歌う曲を覚えちゃったとかあるけど、最大の理由は、きっとDNA(遺伝子)だ。

今の20~30代の親たちは、まさにBARBEE BOYSを聴いて、恋をしていた世代。そのとき感じたトキメキやせつなさが、形を変えて遺伝子の記憶として、その子どもたちに受け継がれている。アナログな恋の記憶が、血の中を流れているのだと思う。あの頃の空気が、記憶の奥で今も残っていて、時折見え隠れする。その時に「エモい」と感じるんだと思うんだよね。

デジタルの時代に、あえてアナログを

レトロブーム、エモさへの回帰。それは、デジタルのスピードと効率に疲れた現代人が、どこかで“体温”を欲している証かもしれない。手紙を書く、返事を待つ、時間をかけて想いを伝える。そんな一つひとつの、言ってしまえば「面倒くささ」の中に、本当の感情があるんだと思うのです。

変わらない音、つながる心

KONTAさんの事故を知ったとき、言葉が止まった。でも、音楽は止まらない。夜の匂いのするエモいラブソングは、今も僕の中で鳴り続けている。

そして、BARBEE BOYSの音楽は、時代を超えて“エモさ”をつなぐ。

これからも、忘れたくないエモい気持ちがある限り、聴き続けていこうと思っています。エモい気持ちは、何歳になっても持っていたいよね。

だから僕は、55際になった今でもBARBEE BOYSを聴く。

BARBEE BOYSの音がないと、僕の恋愛の記憶も、情熱も輪郭を失ってしまう気がする。それは選曲をして何かを伝えるという熱さがなくなっちゃう。それはもうDJじゃなくなっちゃうんだよね。

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