雑味を感じさせず飲めるピュアウォッカ
見えつかくれつ変幻自在
ほらあなたの後ろにいる…
時代は令和になり平成生まれの方々には、馴染みはないかもしれないが、これは昭和を代表する歌謡曲、ピンクレディーのカメレオンアーミーに出てくる歌詞のフレーズだ。
今回の「うまい話」は変幻自在、カクテルベース界のカメレオン的なスピリッツ「ウォッカ」について話そう。
缶チューハイや居酒屋の飲み放題メニューに慣れた方が、本格的なカクテルを飲みたい時の参考にしてほしいので、ここでは「ピュアウォッカ」とは?みたいな詳しい解説や、おすすめランキング~的なのは紹介しないでおく。詳しい解説やランキングなどが知りたいなら、検索すればいくらでも出てくるのでそちらでどうぞ。
個性がないのが個性
見えつかくれつ変幻自在なスピリッツ「ウォッカ」。そんなウォッカには、ピュアウォッカと呼ばれる原料以外に添加されていないものと、フレーバードウォッカという香りをつけたものとがある。
フレーバードウォッカは、ハーブや果物を添加し浸け込んだもので、ラベルに記されいるから容易に見分けがつくだろう。
主にカクテルベースに使われるのがピュアウォッカだ。
ピュアウォッカは、まるで水のようにほぼ個性も味も無いという、カクテルの副材料にとっては願ったり叶ったりなスピリッツなのだ。どんな割り材にも邪魔せず溶け込んでしまう。
そんな個性がないのが個性といっていいくらいだろう。
ウォッカといえばショットガン!?
私にも「あの頃は若かったな」と思わせるウォッカにまつわるエピソードがある。30年ほど前の平成バブル期といわれた時代、二十歳そこそこで自分の店を始めた。今よりカクテルや高級酒が水のように飲まれていて、夜の店が活気に溢れていた。その頃流行っていたのがショットガンという飲み方。
ショットグラスにテキーラと炭酸水を1:1で注ぐ。カットしたライムをかじり、ショットグラスの口を手のひらで覆い、グラスの底をテーブルに叩きつけ、炭酸の泡でテキーラと混じったところを一気飲み。そして塩をひと舐めするといったワイルドな飲み方だ。
私の店では、そのショットガンのテキーラをスピリタスに代えて出していた。ウォッカの中でもスピリタスは世界一アルコール度数が高い酒とされている。(アルコール度数96度)
人によってはショット一杯飲んでも、急性アルコール中毒で運ばれるパワーを秘めたスピリタス。そんなスピリタスをストレートで飲むお客さんもいたが、それを店でやられると後始末が大変。そこでショットガンのスピリタス版になった。そもそもお店で出さなきゃいいのに、という声も聞こえてきそうだが、平成バブルという時代がそうはさせてくれなかったのだ。
高純度ピュアウォッカ「スピリタス」
ウォッカは大麦、小麦、ジャガイモ、とうもろこしなどの原料に、酵母を加えて発酵させたのち蒸留を繰り返す。蒸留を繰り返していき、アルコール度数が高くなった後は水で割り、度数を40〜60度程度に調整し、白樺でろ過して完成させる。
スピリタスは、その中の「水で割る」という工程を省いたものになる。蒸留を繰り返すことで純度が増し、アルコール度数が高くなるのだが、スピリタスはこの蒸留を70回以上も繰り返している。
「ピュアウォッカ」はカクテルで飲む
カクテルベースによく使われるのは、ジン、テキーラ、ラム、ウォッカの4大スピリッツ。そんなスピリッツの中でもピュアウォッカには味が無い。良く出来たものほど味が無い。
おそらく一般的なイメージではウォッカはアルコール臭いだけとか、度数が高いだけみたいなところがあると思うが、どこにでもあるスーパーや食料品店に置かれているような、粗悪なウォッカしか飲んだことがなければ当然の反応だろう。しかし「味が無い」というのはそんなアルコール臭さすらないのだ。
誰の邪魔もしない控え目なヤツ
ピュアウォッカは味が無いため、カクテルに使われる副材料に何の邪魔もしない。
その昔、バブリーな昭和の時代にはピュアウォッカを使ったスクリュードライバーなどのカクテルが流行った。普通のオレンジジュースかと思えるほど、素材の味を最大限に活かしてくれる魔法のお酒でもあり、それを利用して女性を落とすツールにもなる悪魔のお酒でもある。
今ではひとくくりに「チューハイ」といわれているものも、元は居酒屋メニューである焼酎ハイボールからきている。現在出回っている多くの缶チューハイは一部を除いたほとんどがウォッカ、スピリッツベースなのだ。
それだけウォッカは飲みやすく、副材料の味を邪魔しない控え目なヤツだからだろう。
ピュアウォッカを美味しく飲むために
そんなウォッカをカクテルで美味しく飲むために、私は「アブソルート」というスウェーデン産の小麦を原料としたウォッカを使っている。このアブソルートはカクテルベースとしては高品質なピュアウォッカだ。
最近では「アブソルベント」というピュアウォッカもお気に入りのひとつ。ウォッカ発祥地ともいわれるポーランド産で、日本ではメジャーなズブロッカと同じメーカーのウォッカだが、1000円未満にもかかわらず、カクテルベースとしては高品質というコストパフォーマンスの高さ。
ウォッカ選びに迷ったら試してほしい。
まとめというかおまけ
ウォッカ愛好家には申し訳ないが、ピュアウォッカに対してはカクテルベースのスピリッツという認識しかない。
記事を書くにあたり飲み比べでもしようかと思ったのだが、4000円台のプレミアム・ウォッカをストレートで飲んだところで、ジンを愛飲する私には1000円台、2000円台のジンを飲み比べる方が遥かに有益なのだ。
雑味やアルコール臭さの少ないピュアウォッカが美味しいカクテルベースとされるなら、プレミアム・ウォッカにまで手を出さなくてもいいのではと思った。1000円台のウォッカの中にも十分に高品質のピュアウォッカがあるのだから。
ちなみにピュアウォッカに限らずだが、スピリッツをストレートで試飲するなら、冷凍庫でキンキンに冷やしたものを飲むといい。味気ないピュアウォッカでもトロッとした口当たりで、美味しく飲めるので試してみてほしい。
美味しいお酒を飲みたくなったらSnackランデブーへ。
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