お菓子をくれる人はいい人だ
ありがたいことに「むがじん」編集長からお菓子をもらった。長野産あんずを使ったカップケーキだ。黄色い体がチェック柄の紙カップに包まれていて、素朴な愛らしさがある。
四月は黄色の季節。ふきのとうの時期が過ぎたと思ったら、野には菜花が並んでいる。庭ではあちこちにたんぽぽも咲いていて、冬の気配はもうどこかに過ぎ去ってしまったようだ。これからもう少しすると、あんずの採れる時期らしい。近隣にあんずの木は無いようだが、いつか見に行ってみたいものだ。
いざ、実食
今回のイメージカットの撮影を終えて、家まで帰らぬうちにケーキを口にする。いかにも春といったのどかな日であるから、歩きながら外で食べるのもいいものであろう。
ふわっとしたケーキの口どけと甘酸っぱいあんずのアクセントに期待を寄せ、頬張った一塊。
が、なんというか、その、ちょっとぼそぼそしていた。
思ったよりしっかりした食感に意外さをおぼえながら咀嚼し、あんずの味を探す。が、行方不明。柑橘の皮のような少し硬いものが細かく入っているようだけれど、特別な味は感じられなかった。
ちょっと食べづらい少し固めのカップケーキ。決してまずくはないけれど、それだけ。困った、ちょうどネタにできないクオリティである。そして何より、編集長に何て言おう。
そんなことを考えながらもとりあえずお茶を淹れる。実は編集長からあんずを使ったハーブティーなるものも頂いていたのだ。これが美味しければなんとかなる。そうだ、これをメインに記事を書くことにしよう。
沈黙の春
熱いお湯をわかして急須に注いでみると、きれいな赤い水色であった。
冷めるのをすこし待ちつつやおら口に含むと、はっきりとした酸味が感じられる。美味しい。例えるならばローズヒップティー。
というか、原材料を見るとハイビスカスとローズヒップがあんずよりもたっぷりと入っているらしく、どうやらこれは、ほぼ市販のハイビスカスティーである。
普段から様々なお茶を飲んでいるけれども、正直あんずの風味をかぎわけるのはなかなか難しいように思われた。ハーブティーを飲みなれている、少しマニア寄りの人向け商品、といったところか。
特産品哀歌
うーん、なんでこんなことになってしまったんだろう。そう思いつつハーブティーのパッケージを見るに、あることに気付く。
数ある原料の中で、唯一あんずだけが国内産なのだ。それ以外は一般的な原料を使っているらしい。あんずの生産量には限りがあるし、単価も安くはなかろう。これは推測に過ぎないけれど、ハーブティーにしろケーキにしろ、そういう制約の中で努力した結果なのかもしれない。
思えばそういうお菓子って、どこに行ってもあるよなあ。旅行先で見つけたお菓子に「当地特産の〇〇」が使われているとあり、買って食べてみるもよくわからない。これなら家の近くのスーパーに売ってるやつの方がいいやとなる。
しかしまあ、お土産というのは心のものである。各地域の特産を前にしてその地に思いを馳せ、あるいは思い出話に花を咲かせる。渡す相手やくれた人を思い浮かべて、人間関係を豊かにする。
もちろんそれで新たな味覚に出会えればもっと良いけれど、それよりもっと人の心を楽しませるものが、お土産というものなのだろう。という風に締めればいい話っぽくなりませんかね?