「ラナと竜の方舟」を読んで、泣いたり考えたりしたこと

油断していたら、泣いていた

本を読んでいて、ふと気がつくと泣いていることがあります。

最初から「これは泣く本ですよ」と書いてあれば、それなりに心の準備ができるのですが、そういうことはどこにも書いていなかったので、油断していました。

しかも、読み始めたときは「ふむふむ、これはおもしろそうだな」と落ち着いた気持ちでいたのに、ラナが歌うあたりで、もうダメでした。ページをめくりながら、涙がぽたぽた落ちていくのを止められませんでした。  

ただの冒険物語じゃなかった

「ラナと竜の方舟」は、新藤悦子さんが書かれた物語です。人間と竜が共に生きる世界で、少女ラナが自分の生きていく場所を探す物語です。

わたくしは最初「どこか遠くの世界の冒険のお話」なんだと思っていました。

でも、読み進めるうちに、「これは、わたしたちの世界のことでもあるな」と感じるようになりました。物語の中に出てくる人々の気持ちや迷いが、どこか自分の中にもあるもののように思えてきたんです。  

登場人物みんなに共感してしまう

この物語には、個性豊かな登場人物が登場します。そして、わたくしは彼らの誰に対しても「わかるなあ」と思いながら読んでいました。自分と同じ気持ちの人がいたり、反対の考えの人がいたり、それでもお互いに関わり合いながら進んでいく。わたくしはこういう物語がとても好きです。

特にミハイルの「ここにいたら、おれが生きてるってだれにも知ってもらえない」というセリフには勝手にしみじみしてしまいました。  

やさしくて、するすると読める文章

新藤さんの文章は読みやすくて、とてもやさしいんです。

余計な説明がなく、すっと物語の中に入っていけるのですが、それでいて、言葉のひとつひとつが心に残ります。読んでいるうちに、まるで自分もラナたちといっしょに旅をしているような気持ちになりました。  

佐竹美保さんの挿絵がすごい

そして、佐竹美保さんの挿絵。佐竹さんは「魔女の宅急便」や「ハリーポッター」など、誰もが読んだことがあるであろう作品の挿絵を描かれている方。

この「ラナと竜の方舟」の挿絵も本当にすばらしかったです。今回読んでいて特に刺さったのは「手の表情」でした。手の描き方がすごいのです。

わたくしはこの本を読むまで「手の表情」というものをあまり意識していませんでした。でも、ここに描かれた手は、指先のちょっとした角度だけで「この人は今、こういう気持ちなんだな」というのが伝わってくるのです。絵の力って、すごいなと思いました。  

「オレンジの誓い」が心にしみた

物語の中でも特に心に残ったのが「オレンジの誓い」の場面です。あまり詳しく書くとネタバレになるので伏せますが……。

人は時々、自分が信じていることが正しいのかわからなくなることがあります。でも、それでも信じて進もうとする気持ちがあれば、きっと道はつながっていくのだろうな、と。ラナのまっすぐな気持ちが伝わってきて、胸がぎゅっとなりました。  

そして、ラナの歌にやられた

そして、ラナが歌う場面。あの瞬間、わたくしは完全に心をつかまれました。

物語の中の歌なのに、佐竹さんの挿絵から歌が聴こえてきそうでした。ラナのこれまで抱えてきた思いが、一気にあふれ出して、わたくしの中にも流れ込んでくるようでした。

涙が出たのは、悲しいからではなく、ただただ心が動いたから。完全に鷲掴みされてました。 詳しく書きたいけど書かないから読んで!!! 

この本に出会えてよかった

「ラナと竜の方舟」は、やさしくて、力強くて、とても心あたたまる物語でした。……って書くと思いっきり「一般的な良い本」みたいに聞こえるかもしれないけど、違うの!違うんです!!

それぞれの登場人物がちゃんと描かれていて、挿絵とあわせてその情景も見えてくるのでまるで映画を観ているみたいな気持ちになれる作品。というか映画化してほしい!!

きっと、しばらくたってからもう一度読んでも、またわたくしは泣いてしまうことでしょう。

ボリューム的にも読みやすいページ数だし、登場人物への感情移入がしやすいので読書感想文にもおすすめ。

週末のゆっくりできる時間に読んで「涙活」するのもいいかもしれません。思わず号泣します。

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ほりたみわ
クリエイター(イラスト、漫画、熊手、ヒーリング、瓦職人)。 チーママをやっていたスナックランデブーは魂のかたわれ、はるじが肉体の衣を脱いだことにより閉店しました。ときどき企画&プロデュサー。どこにも偏り切れないカラフルな人。