汝の名は「ビーバー」
この頃、僕の近所ではやたらと目にする機会が多くなったお菓子がある。
近所のスーパーに行っても、観光地のお土産屋に行っても、目立つところに置いてある。
どこか懐かしさのある、かわいいパッケージだ。
そのお菓子の名前は、「ビーバー」。海の向こうの、巨大な齧歯類から名前をとっている。

ビーバーをかじる
ビーバーというお菓子は、単純に言うと揚げあられである。
数cmほどの大きさの、昆布の入った、油で揚げたお米のスナック。
口に入れて噛んでいると、ああ、確かに米の風味が広がる。
フライしたスナックで比べるなら、ポテトチップスよりも、長く素材の風味を味わえる。
軽い中にも、食べ応え、というようなものがある。
くどくなりすぎない程の塩加減が丁度よく、つい手が伸びてしまう。困った。
思えば遠くに来たもんだ
北陸製菓の公式サイトによると、この「ビーバー」という名前は、1970年の大阪万博に由来するらしい。
当時のカナダ館に飾られていたビーバーのぬいぐるみ、その前歯の形に似ていたところからこの名が付けられたのだという。
カナダということであれば、おそらくはアメリカビーバー。
北米の河の中で暮らす、カピバラの次にでっかい齧歯類。
もちろん彼等は日本のビーバーなど知らないだろうし、ほとんどのカナダ人も知らないだろう。
思えば遠くに来たもんだ。
憧れははるかに
個人的に、カナダはけっこう気になる土地だったりする。
広大な森林が広がり、大きなグリズリーが河でキングサーモンを獲っている。
僕の専門である写真に絡めて言えば、星野道夫が死んだ場所。
そんな中にビーバーのダムもあるのだろう。
僕は、それをこの目で見ることがあるのだろうか?
まだ見ぬ遠い土地を思う。
自分の中にある、淡くはるかな憧れを思う。
1970年、大阪万博
遠い憧れと言えば、ビーバーという名前のきっかけになったという大阪万博は、どのような様相だったのだろうか。
人間洗濯機が注目を集め、太陽の塔の中では四谷シモンの人形たちが出迎えたと聞く。
「人類の進歩と調和」、そんな大それたテーマにどれほど心躍らせただろう。
僕の家のアルバムにも、少年時代の父が写った白黒写真が残っている。
2025年、自宅にて
さて、2025年春。テレビを付ければちょうど大阪万博開幕のニュースが流れている。
今回の万博にはどれくらいの人数が詰めかけるかしら。
やっぱり会場付近は人でごった返すだろうなあ。
そこでどんな夢を見て、どんな憧れを胸に抱いて帰るのだろう。
そんなことを考えていると、いつの間にかビーバーを一袋、すっかり食べ終えてしまった。
揚げ菓子を一袋は流石に気分が悪くなるかと思っていたが、意外やそんなことはない。
僕もまだまだやれるな。そのうちカナダにも行くだろう。