推しと、弟子と、レディと、旅に出る。

写真展で富山に行った

「7月11日の土曜日、富山に行きます」というタイトルでメールをしたのは、同じく7月6日の午後1時前ごろだった。

会社で「今週末、富山行ってくる。写真展見に」と私よりも年下の先輩に告げたところ、「ナガセさん、コンビニ行くノリで県越えますよね」と返ってきた。
「国内なんか遠征のうちに入らんからね、アイドルの追っかけしてりゃ」と相手の顔も見ずに返事をして、私はPCの前に座り直した。

行きますとメールをしたものの、mugazine編集長こと、ほりたみわさんに直接お目にかかるのは、確か3回目だ。
しかも、前回から余裕で10年以上の時間が経過している。

ホントに行くんだろうか、富山。
そもそも、みわしゃん、私のことを覚えているだろうか。
前日に怖気づいたりしないだろうか。
Slackを眺めながら、頭の隅で自分の行動を疑った。

わたしと、みわしゃん

私は、ほりたみわさんのことを出会った当初から、何故か「みわしゃん」と呼んでいる。
以下、本文中も「みわしゃん」と表記する。

とりあえず今回は、出会いだとかは、一旦省く。
話したいのは、富山であった話だ。
それも約束していた7月11日ではなくて、12日の話。

7月12日、私は予約したホテルではなくて、みわしゃんの富山のお家で目覚めた。
前日に閉店間際のランデブーで「泊まっていけばいいじゃん」と誘われて、一秒も迷わず「泊まります!」と答えたからだ。

ホテルには、速攻でキャンセル連絡をした。
不泊扱いで全額支払いですと言われたけれど、どうでもいい。
どうせ溜まってたマイルで払ってたからな!

しかし、目が覚めて「ここ、どこだっけ……」と一瞬混乱した。
諸事情で、前日死ぬほど歩きまわっていたため、爆睡も爆睡。
枕元のスマートフォンで測っていた睡眠スコアは、何時になく高得点を叩き出していた。

「あ、そうか。みわしゃんちか」と体を起こし、とりあえずお仏壇に「おはようございます、お部屋お借りしました」と頭を下げた。
はるじさんも「一体、誰だろう」と思われたことだろう。
すみません、あなたのパートナーさんを、大体15年くらい追っかけていますとしか言えねえ……。

推しに会いに来たら、泊めてもらい、しかも前日行きそこねたお寺へ連れて行ってもらえるという。
もう2020年の幸運は使い切ったのではないか、ナガセよ。

はじめまして、ナガセです

あ、そういえば、流石に自己紹介はしないとまずいですね。
すみません。
ナガセ ミチルと申します。
本業はPerfumeの追っかけで、副業はみわしゃんの追っかけです。
去年からうっかりフリーランスになってしまいました。
ふだんは、こういう文章や小説を書いたり、よそんちの事務作業をしたりして生きてます。

話を強引に戻します。
今は、2020年の7月12日です。
そう思ってください。

【2020年7月11日】
富山へ行く
→倶利迦羅不動寺 山頂本殿へ徒歩で行く
→スナック・ランデヴーへ行く
→翌日、金沢で友人と会うはずが、急遽取りやめに
→みわしゃんのおうちへ泊めてもらうことになる

【2020年7月12日】
倶利迦羅不動寺 鳳凰殿へ行く
→金剱宮へ行く
→白山比咩神社へ行く
→どーしても行きたい担々麺屋さんで、降ろしてもらう
→関西に帰る(ナガセは関西地方に生息しております)

どうです、わかりやすいでしょう。
ワタシ、議事録書くの得意なんですよ、知らんけど。

このめっちゃわかりやすい時系列で行くと、「倶利迦羅不動寺」という単語が2つ出てきますね?
見えますね?
お前、前日行っとるんちゃうんかいとなりますよね?

行ってないんです。
もう一度わかりやすくいいますね、鳳凰殿と山頂本殿が正反対に位置していることを把握しておらず、山頂本殿について一通り満喫した後にしくじったことに気づいたので、行ってないんです。

そのことを名店・ランデヴーで嘆いたところ、私の推しこと、みわしゃんが「明日予定がなくなったんだったら、連れて行ってあげるよ。つうか、泊まっていけばいいじゃない」と。

ははーん、推しの前世は東方の三賢者とかなんだな?
そういうことなんだな?

唐突ですが、これを読んでくださっているあなたが思っていることを当てますね。
「お前、最初と文体とかテンションとか、色々なんかもう、ちゃうやんか」でしょう?
思ってなくてもお返事します。

〜mugazineトリップ 20/07 レポート〜
はっじまるよーーーーーー!

あ、トリップをカタカナにしたのは、旅行っていうのもありますけど、私のレポートが話題が安定しないで、あっちこっち飛びがちだっていう意味も含まれているので、ご安心ください。

いいですか、これを読んでいる人は大体が大人なんだから、多少のよくわからなさには頑張ってついてきてくださいね!
こっちがナガセ文体の通常運転ですからね!

そんでもって、7月12日。

で。
戻って、12日の朝ですよ。
よそさまのおうちでお釣りが来るくらい寝た挙げ句、お腹すいたなあとぼーっとしておりました。
あ、そうだ、みわしゃんに起きましたよとお伝えせねば。
前日交換したLINEにて、恐る恐る挨拶を打ち込みますれば、速攻でレスあり。

推しと!LINEとか!僥倖でしか!
パチ屋のアオリだってこんなダサくねえなあと思っているけれど、まあ、本人公認のオンラインストーカーなので、気持ち悪いのは今更ですね。
諦めてください。

一緒に住んでる(でいいのか)おみそさんが、メロンを切ってくれたり、バナナをくれたり、コーヒーを入れてくれたりと尽くしてくださったので、私はたいそうふんぞり返って延々ともぐもぐしました。
メロンって、美味しいよね。

おみそさんのことはみんな知ってるだろうから割愛します。
しいていうなら、弟子です。
ええ、私のです。
だって、師匠って呼ばれてるしぃ。
ノートあげたしぃ。
なんで師匠って呼ばれてんのかは、また別の機会に自慢しますね。
今は、読んでくれているあなたと会ったこともないナガセが、ドヤ顔でこれを打ち込んでいるんだなということにだけ、一瞬呆れてください。

12日の朝の話を続けます。
ふんぞり返って飲み食いをしたあと、さっき出した予定の通り、まずは倶利迦羅不動寺の鳳凰殿に向かって出発です。
紫色とポニーテールがよく似合うランデヴーの素敵レディこと、やえちゃんも一緒です。

今日の天気はやや曇り。
まあ、私が移動した先は晴れるので大丈夫です。
Perfumeの一番初めのワールドツアーで行った台湾の九份でも、ピーカンになったし。
数年前にふらっと沖縄に遊びに行ったら、関西に台風が直撃して「ナガセ、関西にいないやろ、はよ帰ってこい」というどうしようもねえメールが5通くらい来てたりしたし。

今回も基本的に曇天だったんですが、めっちゃ降ってるやーんみたいな感じに困りはしませんでした。
ラッキーだな!(語彙がない)

おみそさんの運転で、mugazineトリップがスタートですよ!
もう楽しい!

後部座席で、運転手のおみそさんと助手席のみわしゃんがおしゃべりをしているところを眺めていると「今、私は推しを見守る背景になっている。これは幸せである」と成仏しかけたんですけど、素敵レディのやえちゃんが「半袖寒くないの?」と気遣ってくださったおかげで無事に俗世に戻りました。

ありがとう、素敵レディのやえちゃん。
ポニーテールがラヴリー。

車内で何の話をしていたのかというと……
みわしゃんが髪の毛の色を変えようかなあと相談→しかし、その時はこの色!という案は出ず。

ナガセ「でも、射手座は下半期イメチェンのチャンスですよ。だから髪色変える良いと思います」
みわしゃん「え、ナガせちゃん、なんでほりたさんが射手座だって知ってるの?」
ナガセ「ストーカーだからです!!!!!」

みわしゃんはケラケラ笑って「そっかー」とおっしゃっていたけれど、よくよく考えると即座に生年月日言えるのは、何かしらのハラスメントではと後部座席で白目になりました。
許してください。
ちなみに、ナガセも射手座です。
これは、全く覚えなくていいです。

紫陽花の咲く鳳凰殿

さて、鳳凰殿到着。
拝観料を支払うのに、小銭がなくて「あ、あ、あ」となっている間に、みわしゃんが「全員分払った」とさらり。

推しに!奢ってもらってしまった!
これは一生かけて返さなくてはならないんでは。
ちなみに、200円です。
推しに重いわ!

そのあとろうそく立てるところがありまして、「じゃあここは私が」とするりとお金を払います。
おみそさんが。

色々見比べて、交通安全にしたよ。
なぜなら、みわしゃんが免許をとったばかりだからだね!
おめでたいね、いやっほう!
ちなみに、ナガセは無免許です。
これも、全く覚えなくていいです。

では、本堂へお邪魔して、お参りをします。
みわしゃんとおみそさんは、一文字だけ写経を納めるというものをしていました。
私はというと、車に置き去りにした御朱印帳を慌てて取りに戻っていました。
ザッツ・粗忽!
ツメが甘い!

御朱印をいただくことをずっと避けていたんです、実は。
お寺や神社に行くことは大好きなんですけど、どういうわけか自分が御朱印帳を持つのはなんだか嫌だなあと思っていたんです。

しかし、少し前に弾丸で旅行した、広島県・厳島神社にて唐突に御朱印帳を買ってしまいまして、今回もせっかくだからと持ってきました。
鳳凰殿に来たのはもちろんそれもあるんですが、もう一つ目的がありました。

あじさいをモチーフにしたスイーツを、どーーーーしても食べたかったんです。
インスタで見たの!
きれいだったの!

御朱印帳を預けて、売店というか食堂にて注文をします。
みわしゃん、おみそさん、素敵レディのやえちゃんを待たせるという、ど厚かましさ。

こちらです、味彩スイーツ!

厚かましさに輪をかけて、プロカメラマンのおみそさんに「これ撮ってください」とゴリ押しでお願いをします。
やさしいおみそさんは、ちゃーんと撮ってくれました!
あのときはありがとう、LINEのトークルームの背景に使ってます。
その直後、自撮りをかましたのは秘密です。
もちろん隠せてないけどな!

お、いいね。書いてよ、ナガセちゃん

お次は、金剱宮です。
やったー、初めての場所!!
この移動中で「師匠、編集長とカメラマンがいるんですからこれはもうmugazine旅ですよ! レポート書いてくださいよ!」と、おみそさんから依頼がすっ飛んできます。
え、私の文章が?
migazineに載れんの?
出れんの、サマソニみたいな自問自答をしているうちに、危うく「それは、掲載料はおいくら万円払えばいいんでしょーか」とつぶやきかけます。

みわしゃんも「お、いいね。書いてよ、ナガセちゃん。挿絵は描くから。」と。
おみそさんは「写真はお任せあれ」と。

すげーな、クリエイターは。
守備範囲がはっきりしている。

「あ、じゃあ、はい。書きます」と。
私、なんだかんだ四半世紀くらい続けてるんです、創作。
でも、まさか自分が尊敬している人から「書いて」と言われるとは思っていなかった。

写真展に来たんだからそんな事考えてなかったし、変更前の予定だったら大学時代の友達と金沢駅らへんで甘いものとかつついてたはずだったんですよ。
それだってもちろん楽しみにしてたんだけど、マジで人生って何が起こるのかわからへんのやなとひっさびさに実感しました。
私、自分が思ってるより「文章の人」って思われてんだな。

おい、13歳のナガセ。
君はなんとなく始めた創作を続けているうちにやめられなくなるどころか、憧れの人からオファーをもらうんだぞ。
頭の中が過去と今を行ったり来たりしている間にも、車は着実に金剱宮へ近づいていきます。

駐車にややテクニックがいりそうな場所に車を押し込んで、お参りです。
ナガセ「お社の周りにサッシ付いてるんですね」
みわしゃん「雪国ならではだよねえ」

そうか、ここは確かに防ぐものがいる。
晴れの日も雨の日も雪の日も、そこに佇んでいるわけだから。

いくつかの小さなお社を回って、御朱印をいただくために社務所を探しましたが、ばっちりお昼休みの時間!
今の御時世、開け放しておくのもちょっとというのもあるのでしょうね。

なので、こちらでの滞在はこのへんで切り上げて、残り時間はどうしようかと考えます。
いくつか候補を上げつつ、とりあえず近くの道の駅へ行ってみるも、お昼ごはんが確保できそうな環境ではなし。
脱線するんだけど、ここ、建物の上にちょこんと燕の巣があって、そこから顔を出してる燕がとっても可愛かった!

モノクロの虹を見た

あれこれ調べて、次の目的地は白山比咩神社に。
ここも行ったことがないところなので、嬉しい!
みわしゃんも、おみそさんも何度か来たことがある模様。

みわしゃん「あー、ここさー、はるじと歩いたの。富山来たばっかりのころ」
ごくふつうの細い歩道だけれど、私、なんとなくずっと覚えているような気がするなあ、ここと思ったよ、みわしゃん。

白山比咩神社では、小糠雨と小雨にちょこちょこ変わるような感じのお天気。
涼しくてちょうどいいなあと思ったし、軽い雨だと歓迎の証だとも聞くので、のんびり参拝口付近のお土産屋さんを散策。

ちょうどお昼時なので、ここでご飯を食べるのはやはり難しそう。
まあ、とりあえずお参りに行っちゃいましょうよと一行はぞろぞろと鳥居に向かいます。

おみそさんは、カメラマンなのでビシバシに動き回って写真を撮りまくってくれます。
やべえ、弟子が絶賛働いとる。
アタクシ、ちゃんとレポ書けるかしら。
色々覚えとかなと急いで今日のことを整理しながら、傘をさして進みます。

ふと顔を上げると、前を歩いていたみわしゃんが髪をシュルシュルと丸めてフードをかぶるところ。
柔らかい光を溜めた色の長い髪がするすると手元に吸い込まれて行くさまは、龍が身体を丸めて姿勢を落ち着けているようにも見えたのです。
さながら、モノクロの虹。
「ああ、はるじさんがそこにいるんだ」と思いました。
なんの問題もなく、みわしゃんのそばに収まるのが至極当然で。
首の後ろかあ、あったかそうやなあ。

さて、皆さん。
レポートを書くときに絶対にここを入れようと思ったので、ここだけ覚えて帰ってくださいね!!
あとは全部忘れてもいいから!
いっそ、これ読んだことを忘れてもいいから!

じつは、おまけが

白山比咩神社では、無事に御朱印をいただけました!
あとねー、レポート用にネタにしようと思って、実はこっそりおみくじを引いてきたんだな、これが。

いうまでもなく、これは3人には内緒にしております。
本邦初公開だぜ、いえーい!

えーとね、末吉!

・始めは凶であるが、後には吉
・あれこれ迷わないで、先輩の指図をどこまでも忠実に守れ
・人を教育したり、自分が勉強するには良い時期

か、神様!?
なんかガチなメッセージっぽくないですか!?

【願事】心中の願いを人にも言い難い時だが、我意を通さず目上に縋るが良い

え、ちょ、なんでそれ知ってんの!

私、ちょっと前に仕事の時間配分的に書くのをやめたほうがいいんじゃねえかと思ってた時期があったんですよ。
みわしゃんにも、これについて話を聞いてもらったりしてたの。

縋ったあとだよ……。
おみくじ、すごい。

あとはまあ、全体的に誠実にせぇよって書いてあった(すでに誠実さのかけらもない文体である)

おみそさんがシャッターを押しまくるなか、来た道を引き返してさっきのお土産屋さんでみわしゃんとおみそさんはめずらしく甘いものを摂取!
むっちゃ美味しかったらしいですわよ、奥様。
ナガセは、小豆が苦手で食べられずでした……。

さて、この後は私が会社の人から聞いた担々麺屋さんに行くという単独イベントに切り替わってしまうので、レポートはこのへんでおしまいです。

担々麺はとっても美味しかったんやけども、その後にちょっとしたハプニングがあってだな。
それはまた次のお話に。

長らくお付き合いいただき、ありがとうございました!
ではまた次の更新で!

写真:冨田実布

◉ゲストライターさん募集中!
連載するほど書くことないけど、これはみんなに知ってほしい!とか、おもしろいもの出来たから見て見て~!という情熱がある方、mugazine編集部までご連絡ください。
ご連絡先 → info[at]mugazine.info

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