この日は、あきおさんと一緒に「あなたが知らないシンデレラ展」の取材で高志の国文学館へ。実は、私にとってこの文学館は初めての訪問です。
名前の響きから、少し格式ばった場所を想像していたのですが、扉をくぐった瞬間、ふわっと空気がやわらかい。
エントランスはガラス張りで開放感があり、窓際の椅子に腰かけて外を眺めれば、取材の合間に小さな物語のひとつくらい思いつきそうな、そんな穏やかさがありました。

常設展示でたどる、富山の文学と風景

館内の常設展示では、富山ゆかりの作家や詩人たちの足跡を通して、この土地に根づく“ことばの文化”を感じることができます。
「ふるさと文学の回廊」では、富山県ゆかりの代表的な作家たち――
古くは万葉歌人・大伴家持から、現代では堀田善衞、源氏鶏太、角川源義。
さらに漫画では藤子不二雄Ⓐや藤子・F・不二雄、映画では滝田洋二郎、本木克英、細田守など、文学だけでなく漫画・アニメ、映画まで、幅広い分野のクリエイターたちが紹介されています。
展示室を歩くと、ことばや物語が、時代を超えてこの土地とつながってきたことが自然と伝わってきます。
また、無料で利用できるライブラリーコーナーも充実しており、清閑な庭を眺めながら本を手に取る時間は、まるで文学の余白に身を置いているようでした。

富山の空気とともに“創作の種”が心に芽吹く――そんな場所です。
さらに、館内には壁一面に天井近くまで本がずらりと並ぶ大書架もあり、展示を見終えたあともゆっくりと“ことば”と向き合う時間を過ごせます。
小泉八雲特集で感じた“もうひとつのばけばけ”
常設展を見たあと、「小泉八雲の展示もある」と聞いて、こちらも拝見してきました。

NHK朝ドラ「ばけばけ」の放映を記念して、「ふるさと文学の蔵③ 特別コレクション室」では小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)特集が開催されています。

展示室に入ると、まず目を引くのは八雲愛用の書棚です。


展示には、草稿の複製『日本―一つの解明(神国日本)』や著書『怪談』『影』のほか、八雲が愛用していたキセルの複製や手書き原稿が。
妻・節子(セツ)の化粧道具や老眼鏡、書簡、家計簿など、生活の温度を感じさせる品々も並んでいます。

八雲とセツ。
書く人と支える人――ふたりが過ごした静かな時間が、展示の中にそっと息づいていました。
言葉と静けさの中で

初めて訪れた高志の国文学館は、思っていたよりずっと開かれた場所でした。
文学や歴史に詳しくなくても、空間そのものがやさしく迎えてくれるような雰囲気があります。
ドラマ「ばけばけ」を通して小泉八雲に興味を持った方にもおすすめです。
物語の背景にある静かな情熱と、言葉の力を感じられる時間になると思います。
📍開催情報:小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)特集
- 会期:2025年6月27日(金)〜2026年2月23日(月・祝)
- 会場:高志の国文学館「ふるさと文学の蔵③ 特別コレクション室」
- 主な展示:小泉八雲草稿、著書『怪談』『影』、セツの織見本帳・虫眼鏡(写真パネル)など
高志の国文学館
所在地:〒930-0095 富山市舟橋南町2-22
電話番号:076-431-5492
※展示室内の写真は、許可を得て撮影しております。





















