推しの仏像の話【正眼寺・銅造誕生釈迦仏立像】

私は「仏像イラストレーター」として活動を始めるにあたり、何かわかりやすいキャラクターを1つ作ることにした。「このキャラといえばカワモト」とわかるような定番のものを。

そのキャラクターこそが「誕生仏くん」であり、誕生仏くんのモデルになったのが、これから語らせていただく仏像だ。

今回は正眼寺・銅造誕生釈迦仏立像、略して「誕生仏さま」について語る。

正眼寺・銅造誕生釈迦仏立像さま

正眼寺(愛知県)の銅造誕生釈迦仏立像さまは、現在は奈良国立博物館の所蔵となっている。飛鳥時代の作で重要文化財。常時公開されていないので、なかなかお目にかかることはできないのが残念だ。

そもそも「誕生仏とは何か」を簡単に説明したい。

誕生仏とは、お釈迦様が生まれてすぐ七歩歩いて「天上天下唯我独尊」と言ったときのシーンを表した仏像だ。

お釈迦様の誕生日である4月8日には「花まつり(灌仏会)」というバースディ・イベントがあちこちのお寺で開催されるのだが、その際、誕生仏に甘露の水(甘茶)をかけてお祝いする。つまり花まつりを象徴するアイテムだ。

誕生仏にもむっちりしたタイプ、頭が大きくゆるキャラのようなタイプ、すらりとした美しいタイプ……などなど様々なので、ぜひ花まつりの時期にはお近くの寺院に立ち寄って見てみてほしい。

誕生仏さまの好きなポイント

誕生仏さまは、なめらかな曲線に魅力があると思っている。

まずはこの腕に注目してほしい。にゅっとした弧を描く右腕。肘関節が見当たらないなめらかさ。「天才バカボン」のレレレのおじさんのポーズに似ていて、ひょうきんな感じがする。右手を頭にそえる様子は、「ヨッ元気?」と気さくに声を掛けられている気分になれてうれしい。

腕が長くて大きいのに対し、足は小さい。甲が高くて足首のくびれが少ない、つまり幼児の足の形をしていて、ゴマのようにちっちゃい足の指を含め赤ちゃんらしさが満載なので、自力で立ててすごい!と褒めたたえたくなる愛らしさがある。

口元は「どう?できたでしょ!」と言わんばかりに得意げに微笑んでいる。生まれてすぐに歩くことができて発語できているのだから、それは得意げになってもよい偉業だ。見ているこちらもつられて笑顔になる。人を笑顔にできるのはアイドルの素質があると思っている。

誕生仏さまは銅で作られたので、つるりとなめらかで、赤子の肌のようにすべすべしているんだろうなあと想像してしまう。きっとひんやりしていて、やがて手の熱が伝わってぬるくなるのだろう。もちろん実物を触ることはできない。

最後に私の誕生仏くんを見てほしい

正眼寺の誕生仏さまをモデルにしたとはいえ、そっくりではなくその愛らしさや全体イメージを参考にさせていただいた。ちなみに目元は第2回に語った飛鳥大佛さまがモデルだ。

カワモトと共に活動してくれて早6年ほど、今年は念願の「誕生仏くんアクリルスタンド」を制作した。上はその写真である。自分が描いた推しが立体になって、誕生祭(甘茶かけ)ができたという喜びはなかなかのものであった。世の中に、芸能人やアニメのアクリルスタンドがあふれかえる意味を体感できた。

なお、喜びのあまり動画を撮った。

これからも誕生仏くんをたくさん描いていきたい。正眼寺の誕生仏さまを語って、改めてそう思うのであった。

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