湯川真紀子のコトワザ・ジャイアント
お笑い芸人、湯川真紀子が諺や慣用句など、こすられまくった喩え言葉についてニヤニヤしながら書いています。
酒飲み
率直に言って、私は酒飲みだ。
あー、ビールおいしいなー。ハイボール最高、焼酎水割り、ドンと来い。日本酒もなかなかイケますよ。
そして愚にもつかないことをベラベラ喋る。
飲んでいるときの記憶のなさったら、どっかの都合悪いことしちゃった政治家並みだ。
なにか不始末をしでかしていたとしたら、秘書のやったことだろう。そうに違いない。
ヘベレケ
しかし、どうしていつもこんなにヘベレケになるのだろう。
そうだ、きっと、妖怪「ヘーベレーケ」のしわざに違いない。
妖怪へーベレーケ。
顔は赤く、頭と胴体が大きく、手足は細く短い。
身長は1~1.5メートル。
オカッパ頭でギョロ目。トーク力に秀でており、人をいい気分にさせ酒を飲ませる。
あるいは、落ち込んでいるときはとことん落ち込ませ、やけ酒を飲ませる。
ヘーベレーケに酒を飲ませられると、必ずヘベレケになってしまうので、誰もヘーベレーケのことを覚えていない。
・・・じゃあ、「顔が赤く、頭と胴体が大きく、手足は細く短い」ってどうしてわかるんだ。
まあ、その辺は、ほら、いいじゃないですか。
と、ここまで書いて、インターネットで調べてみると、明治八年に刊行された「怪化百物語」という本のなかで、酔っぱらって「前後忘却」になってしまったという「前後忘却」に「ヘベレケ」とルビが振ってあるんだとか。
あーーー、惜しいなーーー。妖怪ヘーベレーケだったら良かったのに!!
あとねー、インターネッツには、こんな話も載っておりました。
ギリシャ神話にヘーベという女神がおりまして、このヘーベ、ゼウスとヘーラーの間に生まれた青春を司る美人。美人女神。後にはヘラクレスと結婚したりもしております。
この、ヘーベの役目というのが、宴会でお酌をして回るというもの。ヘーベはとても美人で、お酌上手。神々は勧められるままにお酒を飲んで酔っぱらったんですって。
で、お酌のことをギリシャ語で「エリュエケ」と言いまして、「ヘーベのお酌」が「ヘーベ・エリュエケ」。「へーべ・エリュエケ」がなまって「ヘベレケ」。
ああーーーーー、惜しい!超絶惜しい!妖怪じゃなくて女神だったかーーー!!
適当に考えた妖怪「ヘーベレーケ」の話が惜しいということは、ですよ。この文章がたくさんの人に拡散されて、何年かたったら、もしかしてヘベレケの語源は妖怪ヘーベレーケという時代が来るかもしれん。そうなったら、今、これを読んでくださってる方々は語源の誕生に立ち会ったと言っても過言ではないのです!
・・・語源の誕生ってなんなんだ。本末転倒、本末転倒。
とはいえ、ヘベレケの語源には諸説ありまして、「へ」と「べ」の見分けがつかないぐらいレケレケになっちゃった、とか、ベロンベロン、グデングデンとかの仲間だ、とか、そういうちゃんとしたやつ。
しかし、ちゃんとしたやつでもなかなかくそシュールですよね。
「へ」と「べ」なんて、酔っぱらってなくても見分けがつきにくい。「べ」と「ぺ」ならなおさらだ。
泥酔した状態の「ベロンベロン」って擬態語も、よく考えるとなかなかセンスがあるではないですか。「グデングデン」も。そもそも泥酔した状態を五十音でたとえようとした心意気がすごい。泥酔者には、人になにか言わせたくなる力があるのかもしれん。
千鳥足
で、酔っぱらって歩くことを千鳥足といいますが、これは、昔、中国である祭りがあったときに、召し使いにお酒が振る舞われたんですね。でも、これ、みんなで飲むには量が少なく、一人で飲むには十分な量だったんです。そこで、一番早く千鳥が描けた者がお酒を独り占めできることになり、一番最初に描きあげた者が杯を手にして「お前らがまだ描き終わらないうちに、俺は足も描けるぜ!」と言って、千鳥に足を描き足してお酒をイッキ飲みし、千鳥足になったことから来ているのです。
出典:語源由来辞典
イラスト:ほりたみわ