「仏像イラストレーター」を名乗ってから、何度も「どんな切っ掛けで仏像が好きになったの?」と聞かれる。
しかし「好きな仏像(推し仏像)は?」という質問はあまり聞かれることが無くてちょっと淋しい。というわけで、勝手に私の「推し仏像」を語ろうと思う。
(推したい仏像は複数いらっしゃるので、今回はカワモト内総選挙No.1の仏像について語らせていただく。)
法隆寺・百済観音さま
私の推し仏像は、法隆寺の百済観音像さまだ。
百済観音さま好きの私は、一般的に百済観音像がどのくらいの知名度を誇るのかわからなくなってしまったので、しつこくならない程度にざっくり紹介する。
飛鳥時代に作られた仏像で国宝、通常は法隆寺の大宝蔵院(宝物館)の奥にある百済観音堂で公開されている。これ以上の情報は、ぜひ法隆寺のHPでご覧いただきたい。写真もある。
百済観音様の好きなポイント
この記事を書くに当たって、今一度、百済観音像の写真を開き、考え直してみた。
やはりこのスラリとした体形。横から見たときに、首が細くて長く、その下にまっすぐと伸びた背筋が続く。凛としたシンプルな美しさを感じるところ。このまっすぐな姿勢の頭には、ぽってりとしたボリュームのある光背(仏像の後ろにつける装飾)があるのも、とてもバランスが良くて私好みのところだ。
こういう「凛とした美しさ」には憧れがあって、思い出すのは大学の卒業式に着たレンタル振袖の柄だ。華やかな牡丹柄はどうしても着たくなく、白地にスッと墨の線が走るだけのシンプルなものを選んだ。あの着物を思い出す。
お顔立ちはとても上品で柔和だ。なにぶん古いもので塗料は剥落し、造られた当初の顔立ちからは大きく変わっているのだろうなと思うのだが、凹凸が少ないいわゆる「しょうゆ顔」という部類に近く、控えめで主張の少ない目元、慎ましやかな鼻と口がある。これまた私好みである。
百済観音様はきっかけのひとつ
初めて百済観音像を見たときは、こんな仏像があるのかと驚いた。
ここの体型が素敵、顔立ちのあそこが好き、他にも…と良いところを見つめていたら、他の仏像も良いところがどんどん目について美しく見えてきた。百済観音像は私の仏像好きのきっかけのひとつだと、思い返すとそういうことになる。
あの慎ましいお顔で、お上品な指先でそっと私をつまみ上げ、あなたは仏像好きになるよ、と教えてくれたのだと思う。