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――だからほりたさんは嫌われる(今日も)
ご高齢の友人(仮名・よしひと)から電話があった。
「最近の世の中はさ、孤独死ばっかりで……もうほんとにイヤになっちゃうよ」
という嘆きに対し、わたくしは静かにこう申し上げた。
「まあ、いつの世も苦しみはありますし……問題は、それに対して自分がどう動くかじゃないですかね?」
それを聞いたよしひとは、少し間を置いて言った。
「うーん……なんか、それって、あまりに一般的な答えじゃない?」
それが“一般的”なら、世界はもっと平和になっている
その瞬間、わたくしの口は自動でこう答えておりました。
「でもそれが本当に“一般的”なら、世界はもうとっくに平和になってると思うんですよね」
別に怒ったわけでも、論破しようとしたわけでもない。
平熱36.5度。
わたくしとしては、いつもの温度感で、いつものように喋っておりました。
孤独死の話だったのに、風邪の話を始めるわたくし
よしひとの沈黙の間にわたくしは風邪の話をしていた。
「風邪をひいたら、風邪薬を出すのは簡単なんです。飲めば、まあ治ったような気にはなります。ずっとそれやっててもいいですけど……でも、ほんとうに大切なのは、どうすれば風邪をひかない身体になれるか、ってことじゃないですか?」
ここまで来ると、話のテーマが孤独死だったことはもう遠い記憶となり、完全に“健康づくり講座”になっているように感じられてもしょうがない。
いいえ、違うの。わたくしが言いたいのはそこじゃない。表面だけを捉えないでいただきたい。それだと結局「風邪薬」でしかない。
嘆くだけではなく、アプローチしてるかどうか問題
さらに続けて申し上げたのは、以下のようなことです。
「社会の不幸を嘆くのは、簡単です。実際、嘆きネタはそこら中に落ちてます。ニュースにも出てきますし、たまにポストに届いたりもします。……でも、それをただ嘆いたところで、何が変わるでしょう?」
平熱36.5度。いつもの温度感で、いつものように喋っています。
「だから、嘆くなら、それに対して自分なりのアプローチをしていくべきだと思うんです。していかないなら、もはやそれ、嘆くべきことですらないと思うんですよね」
なんなら、アプローチしていたら嘆いたりしている暇もないはず。
切れたのは、電話か、それとも空気か
そのあたりで電話の向こうが静かになり、「口喧嘩するつもりはないんだけど……」と、期待していた返答が得られなかったようで、がっかりしたよしひとは電話を切った。
気分を損ねたのかもしれません。
でも、わたくしとしては、否定したつもりもなければ……それどころか、むしろ、ある種の同意もしていたつもりだったのです。だからこそのあの答えだったんです。
嘆いてそこで終わりにしない。
空気が冷えたのかどうかも、正直よくわかりません。
ただ、そばで電話を聞いていたじゅんさんが、ぽつりと一言。
「……そういうとこよな」
わたくしは、今日も話す
こうしてまた一人……
いや、嫌われたかどうかは、やっぱりわかりません。
わたくしは変わらずよしひとのことは大好きですし、よしひともきっとわたくしのことは大好きでしょう。
でも、たぶんまた「そういうとこ」で、誰かにひっそりと嫌われていくのでしょう。
それでも、わたくしは今日も、36.5度で話すのです。
静かに、ふつうに。
※このエッセイは、たぶんノンフィクションです。

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