三脚が好きだ【天才写真家の機材談義】

いい三脚というのものは、見ていると思わず笑みをこぼしてしまう。

そっと握って持ち上げてみると、胸の奥がきゅっとなる。

三脚は、人生を豊かにする支えなのだ。

僕は先日、またそんな三脚を手に入れた。

MT-03(Leofoto)

この無機質な記号の羅列が、その三脚の名前だ。

優美にして剛健なるその魅力について、今日は語りたいと思う。

実用上の話などしないから、安心してほしい。

エッフェル塔を見たことはあるか。あの鉄骨の優美な巨躯を。MT-03の外観はそれを思わせる。

四角い鉄の棒でできた細い足。そこには等間隔で1/4インチのネジ穴があけられている。

黒いタイツを思わせる塗装に覆われたそれは滑らかで、指を滑らせるだけで心がおどるようだ。ひめやかにかたく閉じられた足は、しかし、少し力をかければなめらかに開いていく。

その内に隠れているのは、恥ずかしげに折りたたまれた足先だ。纏足を思わせる180度の屈曲をひろげれば、先端に向かってテーパーのかかった脚線美が露わになる。

思わず唇をよせる。つめたい。夏にうかされた僕の脳にしみいる、やさしきつめたさ。

雲台基部の関節をいじれば、股間が地に接するすれすれにまで足を拡げることもできる。わずかなあわいを孕んだ、緊張。嗜虐心にまかせて上から抑えるが、健気にも足はびくともしない。可憐なる強靭さだ。しかもそれでいて、手の平におさまるほどにいとけない。

月を撮りにいこう。夜露にぬれて光るあなたが月光に照らされる様は、きっとなにより美しい。

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