【写真×言葉】「頬を染めた花嫁」

枯れた花の蕾を切ったその瞬間、人間の背骨のように見えた。えも言われぬ哀愁を漂わせ、その生き様さえも浮かび上がるような。気付けば無我夢中でシャッターを切っていた……。

キッカケは、花をモデルにした友人フォトグラファー達との撮影会。自分の技術が圧倒的に足りない事に気付かされてハッとした私は、それからたった一人で花を撮り続ける事にした。撮影を始めた当初は今と違って、つまらない写真しか撮れない苛立ちと、ただ美しいものを撮っているだけだという漠然とした焦りで苦しかったのを覚えている。

自然光やスマホのライトを使って色々と試行錯誤を続けて数ヶ月が経ち、ライティングを組んで撮影することに。そろそろ、あの時の自分には観えなかったものが観えるようなっているかもしれない。そんな直感があった。

いつもは通り過ぎる大手町の地下街にある花屋の店先で、仄かにピンクがかり薄く透き通る花弁が美しいセルリアが目に入り、思わず引き寄せられた。まるであどけない少女の頬のように、微かな色気を放ったその花に釘付けになっている自分がいた。頭の中にぶわぁっとイメージが浮かび、購入して帰るとすぐにライトを組んで撮影に入る。まあこんなもんかとひとしきり撮った後は花を飾り、その命が尽きるまで責任を持って日々お手入れをして枯れるのを待つ。

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