心からあったかくなろう
急な寒さに身も心もやられがちな今日この頃。
ほんわかじんわりあったかくなれる、一冊の漫画本が発売された。
矢部太郎『大家さんと僕』(新潮社)
矢部太郎(敬称略で失礼します)は、お笑い芸人コンビ〝カラテカ〟のボケ担当。
バラエティ番組なんかで細身の体を生かして、胴上げされたり射出されたりしている、あの矢部太郎だ。
『大家さんと僕』は、そんな矢部太郎が暮らすアパート(元・二世帯住宅)での、大家さんとの近すぎる関係を描いた漫画である。
シンプルながら味わいのある画風と、ゆったりとした雰囲気の中で展開するストーリーは、一度読むとクセになる。
大家さんと矢部太郎の絶妙なやりとりがたまらなくかわいくて、読めば読むほど心があったかくなっていくのだ。
寒い季節に凍える心を、ぜひ『大家さんと僕』であたためていただきたい。
かわいい大家さん
『大家さんと僕』に登場する大家さんは、とても上品なおばあさまだ。
87歳というご高齢にも関わらず、身の回りのことは自分できちんとやり、積極的に外出もする、パワフルな女性である。
あまり書くとネタバレになってしまうので細かい説明はしないでおくが、本当にかわいい。
大家さんのファンにならない人なんてこの世に存在しないんじゃないか、っていうくらいかわいい。めちゃくちゃかわいい。
かと思いきや、毒を吐いたり、冷静なツッコミをしたり、年の功を感じさせる一面もある。
ギャップ萌えってやつですよ、ダンナ。
かわいい矢部太郎
そんな大家さんに負けず劣らず、著者である矢部太郎もかわいい。
大家さんの押しの強さにたじろぐ姿も、優しさに触れて戸惑う姿も、周りからからかわれて慌てる姿も、とてもとてもかわいい。
たまに見せる下世話な一面も人間らしくてかわいいし、この本を読んで矢部太郎への印象が変わったことは揺るぎない事実である。
今度テレビで見たら、泣いちゃうかもしれない。
このふたりだからこそ
『大家さんと僕』を読んでいると、「いいなー!こんな大家さんのいるアパートに住みたーい!」
と思うかもしれない。っていうか、絶対思う。
だがしかし、あなたがもしこのアパートに住んだとしても『大家さんと僕』のようにはならないだろう。
この関係は、大家さんと矢部太郎だからこその関係であって、大家さんと矢部太郎だからこそのあたたかさなのだ。
他の誰でもない矢部太郎だからこそ、大家さんはあんなにもかわいらしいおばあさまでいられるのだ。
他の誰でもない大家さんだからこそ、矢部太郎は大家さんを愛おしく思うことができるのだ。
そんなふたりの素敵な関係が、1日でも長く続くことを私は願ってやまない。
まとめ
矢部太郎『大家さんと僕』を私の旦那にも読ませてみた。
「かわいいばあちゃんやな」とあっさりとした感想をもらったが、読み始めてから一度も本を置くことなく読み続けていた姿を私は見逃さなかった。
ほんわかのんびりしたあったかいだけのお話だと思ったら大間違いだ。
『大家さんと僕』は、きちんと構成された、読ませる力のある、素晴らしい漫画作品である。
ぜひ、手に取っていただきたい。