みなさまこんにちは!高岡の秋、芸術の風が吹いております。
現在、高岡市万葉歴史館で開催中の「小泉八雲と万葉集」。その中でも特別展示室の一角に完全に心を持っていかれましたわたくし、自称佐竹さんの一番弟子、ほりたみわ/多神和です。どうもどうも。
特別展示室で展示されていたのは……
佐竹美保が描く再話文学『雪女』。
(写真:冨田実布)
「再話文学」とは?
昔話を“聞き書き”することを「採話」と呼び、そこから作家が再構成したものを「再話」と呼びます。
小泉八雲の『怪談』も、実は“再話文学”だったのだとか。
今回展示されている「雪女」も、武蔵国・西多摩郡の農夫が語った村の伝説がベース。
そんな背景の解説も添えられていて、物語の奥深さにじわり。
実は冬に同席していました
ここでちょっとだけ余談を。
今年の冬、佐竹さんご本人が原画を持参された際に、万葉歴史館の田中さんによるインタビューが行われました。なんと私と、おみそさんもその場に同席させていただくという奇跡が……!
しかも原画に触れさせていただく機会までいただき、感激で冷静さを失ってしまいました。
だからこそ、今回の展示であらためてじっくりと原画に向き合えたことが、本当に嬉しかったのです。
原画9点、震える美しさ
展示されているのは、透明水彩・カラーインク・ガッシュを使用した原画9点。画材はキャンソン水彩紙です。その表現力は、印刷では到底伝えきれません。

キャプションには佐竹さんご本人のコメントも添えられており、作品への理解がより深まります。

偶然にも原画を見ながら佐竹さんとお話しするという、またも奇跡のような機会をいただきましたので、そのコメントもご紹介していきます。
表紙絵と内表紙

色味……あああ……原画はもっと寒そうだし、リアルに近い色味な気がする!!!
雪のあたたかさと冷たさが原画にはある……!!はぁあああ(うっとり)
内表紙の親子の足跡がめちゃくちゃリアル。一人目が歩く時とその後もう一人歩く時の足跡のつき方。感動して嬉しくなるレベル。
佐竹さんからのコメント
これは、文字を入れるためにだいぶ色を変えてあるんですよね。
あと、上からの構図、これはこうしたいなと思って。
あぁ、なるほど。原画の寒そうな雪の感じ、ドローン撮影したかのような構図はぜひその目で!
大吹雪のなかの親子
原画は奥行きが全然違う……っ!!!!視界がほとんど失われるような臨場感に圧倒されました。息をのむような迫力です。吹雪すぎて。
佐竹さんからのコメント
原画は四隅をタチキリでカットされる前の状態なので、周りに広がりが増して、、絵に奥行きが感じられます。原画と印刷物の違いですね。
はぁああ!!ほんとだ!トリミングしてあるからますます奥行きが全然違う!!
雪女の登場
静けさと空気……絵本が2Dなら原画は3D!いや、4D!!ガラス越しでも伝わるこの空気感。
佐竹さんからのコメント
降ってる雪はいずれ止むんですけど、止んだ時に雪女が来るんですよ。だから、雪が降ってる時の空気と止んだ時の空気の違い、その雪女が現れた。
雪が散々降った雪が止むと、例えば夜なんかはものすごく音がないんです。
や、ほんとこれは音のなさがすごい。絵本からでもそれはわかるんですけど、原画のそれはもうほんとに。見てて息が止まりそう。
少年の父親に息を吹きかける雪女

のど部分(本を開いた時の中側)で見えなくなってる部分の着物の表現すごいから見て!!!!めちゃくちゃ「雪女の着物」!!なの!!
佐竹さんからのコメント
音のないところに雪女がすっとやってきて、お父さんに息を吹きかけるんですけど、吹きかけて殺してしまうほど冷たい息なんですよね。
で、それを表すのに、お父さんのその頭の傘をシャーベット状に……見ていただくとわかるんですけど、かかってた雪をシャーベット状に描きました。
雪のふんわり感とシャーベット感とパリッと感と……同じ雪なのにそれぞれで違う質感の表現が本当にすごいんです。
夜があけて、村人に助けられた少年
雪と空の明るさ!!!息を呑む透明感!!!
佐竹さんからのコメント
空気を通ってできた光、ですよね。この光が印刷だと出にくいんですよね。
ですよね!!!これは原画で体感してください。光、雪、影、めちゃくちゃキレイ。
次々に子どもが生まれて幸せに暮らす夫婦に
光、太陽、空気……!!!とにかく没入感がすごい。そこにいるみたい……。
佐竹さんからのコメント
これ、ほとんどカラーインクなんだけど、粒子が出てるところは透明水彩。
なるほど……画材の違いによる質感の違いもぜひ原画で!!
残された子を思い、夫を殺すのをやめる雪女
ま、ま、ま!!まさかの未公開バージョンが展示されております!!!
これほんとすごい……雪女の表情(顔だけでなく全身)と子……感情が爆発してます……!!!
泣ける!!!!一生見ていたい!!!
佐竹さんからのコメント
この青が好きなんです。あとはここの雪の色で室内の囲炉裏の火がわかる。
ここで原画のお写真ないので何のことやらかもしれませんけど、見たら「あぁ!!」ってなります。ここの場面は特に絵本と見比べてほしい。雪女の抱き方、子の体のライン。
最後の場面 消えた雪女
はぁああ……しみる。ぎゅううってなる。言葉にならない。ぎゅうううってなります。
このあたりから「怪談」のDVDのお話になってしまいましたが、キャプションには佐竹さんの思いが書かれておりますのでぜひご覧ください。
細部も見逃せない!他のおすすめポイントも
- 原画の右下に描かれたメモ
- 額装せずに展示、制作時の空気が感じられます
- 書き下ろし原画や関連書籍も展示
- 展示内容は期間により変化(全3期)

佐竹美保をもっと知るなら
なんと、この展示で知ることができましたが、ウィング・ウィング高岡の中央図書館には「佐竹美保コーナー」も常設されているとのこと。
これはもう、ハシゴするしかないですよね。
まとめ
原画を観るって、こんなにぎゅうううっと心を掴まれるものなんだ……と、わたくし震えました。
印刷では決して伝えきれない、原画ならではの空気と色彩の迫力が、ここにはあります。
行かない理由?ありません!!
ぜひ、高岡市万葉歴史館で佐竹さんの「雪女」と出会ってきてください。
会期&イベント情報

特別企画展「小泉八雲と万葉集」
会期:令和7年9月18日(木)~12月1日(月)※火曜日休館
※9月23日(火・祝)は開催し、翌9月24日(水)休館
時間:4月~10月:午前9時~午後6時、11月~3月:午前9時~午後5時
※入館は閉館の45 分前まで
記念講演会「ラフカディオ・ハーンと万葉集」
日時:11月3日(月・祝)午後2時~3時30分
講師:中島淑恵氏(富山大学教授)
聴講料無料 定員120人 ※要観覧料
※聴講希望の方は、事前に電話でお申込ください
担当研究員によるギャラリートーク
●10月4日(土)午後2時~ ※高岡万葉まつり期間
●11月3日(月・祝)午後3時45分~ ※記念講演会終了後
●11月30日(日)午後4時10分~ ※学習講座終了後
◆万葉衣装体験
山口千代子制作の美しい衣装で万葉の歌世界を楽しもう!
11月1日(土)~3日(月・祝)午前9時~午後4時
衣装体験料 1回1名300円(受付は30分前まで)
※別途、観覧料が必要です
高岡市万葉歴史館
所在地:〒933-0116 富山県高岡市伏木一宮1-11-11
電話番号:0766-44-5511