湯川真紀子のコトワザ・ジャイアント第7回「藪から棒」(やぶからぼう)

湯川真紀子のコトワザ・ジャイアント

お笑い芸人、湯川真紀子が諺や慣用句など、こすられまくった喩え言葉についてニヤニヤしながら書いています。

「藪から棒」

コトワザ

青い空、白い雲、木々には新緑、藪から棒。

藪から棒ではありますが、「藪から棒」って言葉がありますね。

「決めた!私、松崎しげるに弟子入りする!」

「藪から棒にナニ言ってやがんでぃ」

の「藪から棒」。

わたしは、これを「ヤブカラ坊」だと思っていた。

落語でいうところの「与太郎」、水戸黄門でいうところの「八兵衛」、ロシア民話でいうところの「イワンのばか」。

ドラえもんだとのび太だし、バカボンだとバカボンパパ、ダヨーンのおじさん、レレレのおじさん、お巡りさん。アラレちゃんでいうと、うーーん、スッパマンかなあ。

あ。今調べたら、ダヨーンのおじさんはバカボンではなく、おそ松くんでしたね。

まあ、そう言うような人の名前だと思っていたのですよ。

「ヤブカラ坊」

例えばね、財布を忘れて出かけちゃったら「サザエさんかよ」って言われちゃうし、結婚式とかの日を間違えちゃったら「のび太かよ」って言われちゃうでしょ。

ヤブカラ坊は、とにかく藪から棒な坊やでした。

急に高いところから飛び降りたり、急に「あ!忘れてた!!」って大きな声を出したり、急に藪から棒を突き出したり。

とにかく急で突拍子もない。

ただし、本人に全く悪意がない。

すべての行動はウッカリから始まる。

ですからね、みんな、ヤブカラ坊のことを憎めないんですよ。

でも、ちょっとイラっとする。ちょっとだけね。ちょっとだけ。

イラっとしないと言ったら嘘になるけんのぅ。

あ、そうそう。二階で水をこぼしちゃったら、どういうわけか一階で寝ていたお父ちゃんの耳にかかっちゃったこともある。

それが、ヤブカラ坊。

ですからね、ヤブカラ坊みたいなことをしてしまうと、「ヤブカラ坊みたいだな」と言われてたのが、だんだん縮まって「ヤブカラ坊になにしやがんでい」となってきたのです。

「ヤブカラ坊になにしやがんでい」では、「てにをは」がおかしいことになっているではないかと思いましたが、「ヤブカラ坊みたいに」が変化したものだと思えば難なくクリアー。

でね、この「ヤブカラ坊」が結局人に愛されるのは、全てがウッカリから始まっているところで、故意がないからなんだなあ。

と、思ったのですが、このヤブカラ坊のしそうなことをやりつつ、全てにおいて故意があり、なおかつ人に愛されているキャラクターを見つけてしまったのですよ。わたしは。

藪から棒を突き出してサザエさんを飛び上がらせたり、寝ている波平さんの耳にちょいと水を垂らしたり。

そう。悪意のあるヤブカラ坊。それは、磯野カツオ。

カツオの行動は受け手からしてみると、急で突拍子もない。

しかし、カツオの側からすると、ビックリさせてやろう、裏をかいてやろう、という気持ちがマンマンなのですよ。

そして、なぜそんなことをしたのか言い訳を聞いてみると、ぐうの音もでない。

てなわけで、そろそろ初ガツオの季節ではないですか。

目には青葉、山ホトトギス、藪から棒。

青い空、白い雲、木々には新緑、初ガツオ。

【藪から棒】予期せぬことが唐突に起こることのたとえ。 また、出し抜けに物事を行うことのたとえ。
出典:藪から棒 – 故事ことわざ辞典

イラスト:ほりたみわ

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