湯川真紀子のコトワザ・ジャイアント
お笑い芸人、湯川真紀子が諺や慣用句など、こすられまくった喩え言葉についてニヤニヤしながら書いています。
「ポシャる」
昔々、ある森の中に正直者のきこりが住んでおりました。
ある日、きこりが湖のほとりで木を
切ろうとしたところ、手が滑って斧を湖に落としてしまいました。
斧がないと、きこりは仕事ができません。
きこりは湖のほとりで途方にくれていました。
すると、湖の中から綺麗な女神が現れて、きこりにこう言いました。
「あなたの今日の仕事、ポシャりましたね!!」
てな訳で、「ポシャる」です。
「ポシャる」
「ポシャる」とは、計画や予定が途中でダメになること、今まで用意してきたものが無駄になること。
きこりの斧に限りません。
何でもかんでも、途中で水にポシャンと浸かってしまっては使い物にならなくなります。
今ならパソコン、スマホ。書類なんかもそうですね。
せっかく干した藁が水に浸かっても台無しだし、今から食べようとしていたオニギリが水にポシャリしてしまっては、もう膝から崩れ落ちるしかありません。
ですから、「ポシャる」とは、これまで用意してきたものが、いいところで水にポシャンと浸かってしまう様から来ているのです!!
ウソです!!!!!
「ポシャる」とは、「シャッポを脱ぐ」から来ているのです!!!
「シャッポを脱ぐ」
「シャッポを脱ぐ」とは、負けを認める、降参する、という意味です。
では、シャッポとはなんなのか。
シャリッポンという野草がありまして、この野草、生えている時はシャリッポンとしているのですが、地面から引っこ抜くと途端にぐんにゃりしてしまうのです。
つまり、シャッポとはこのシャリッポンのことで、元々は「脱ぐ」ではなく、「抜く」だったのです!!
ウソです!!!!
「シャッポ」とは
「シャッポを脱ぐ」の「シャッポ」とは、フランス語で「帽子」のことで、同じように負けを認める、降参するという意味の「兜を脱ぐ」をオシャレにフランス語っぽく言い換えたものなんだそうです。
「シャッポを脱ぐ」が縮まって「シャッポ」。
「シャッポ」を軽妙洒脱に前後を入れ替えて「ポシャ」。この軽妙洒脱さは現在でも「ザギンでシースー」などにみられます。
で、「ポシャ」を動詞化させて「ポシャる」。
「タクシーに乗る」を「タクる」なんて言ったのも今は昔の話でございます。
さてさて。
冒頭で湖に斧を落としたきこりですが、夜更けにきこりの家に道に迷った綺麗な鯉が訪れて、「外来種に食べられそうになったところをあなたの斧が救ってくれました」と恩返しにスパンコールビッチリの布を織ってくれましたとさ。
出典:三省堂 大辞林
イラスト:ほりたみわ