ハゲと漆喰《排熱日記》2

今だから漆喰に描けたよね、と親方と話をしていた。

親方というのは、わたくしの屋根のお仕事の親方……ハゲの親方のこと。

ハゲの親方は屋根のお仕事においては親方でもあり、人生のパートナーでもある、かけがえのない存在。

ハゲ、というとあまり良いイメージを持たれないことが多いけれど、わたくしの「ハゲ」には愛と尊敬が詰まってる。

とある本に書いてあったけど、ハゲは「権威主義の象徴」らしい。わたくしの「愛しのハゲ」も、それはそれは「権威主義の象徴」だった。

なにかというと「絶対」と言い、自分の「これはこうだ」という思いを当たり前のようにぶつけてきて、思い通りにならないとすぐ苛立つ。一体どこの王様なんだか。

しかし、このハゲ……「権威主義の象徴」は過去のものになった。わたくしの愛しのハゲは世界を俯瞰して観れるようになり、口癖だった「絶対」も今ではネタとしてしか使わなくなった。

だからといって毛が生えてきたわけでもないけれど。もしかしたらそのうち生えてくるのかな。

屋根と漆喰

話を屋根に戻そ。親方の屋根のお仕事は本当に美しい。丁寧。無駄がない。子方のわたくしが「うへぇ」と思うようなところまでやる。他の親方だったらしないんじゃないかというところまでやる。

たくさんの親方を育てた大親方からも「あいつは丁寧だし仕事も早い」とのお墨付きなので、単なる子方のひいき目ではない。むしろわたくしは見る目がある。ふふふ。

仕事に対する向き合い方は全然「ハゲ」じゃない。お客様、屋根のことを最優先。そんな親方のことを本当に尊敬してる。

こんな素晴らしい親方のもとで働けるなんて、わたくし屋根の神様に愛されているとしか思えない。

わたくしも瓦職人見習いとして気づけば3年目。

いつまで「見習い」をつけていられるのかわからない年数になってきたけれど、おかげで漆喰を練るのもだいぶ上達した。……と、話をさらに漆喰まで戻す。

そう、漆喰。屋根のお仕事では欠かせない漆喰。

使うにあたって足りないと困るので、どうしても少し多めに作るから、毎回余る。捨てるのももったいないよなあと思いつつ、使うあてもないので処分する。

他の材料もどうしようもないものは処分するのに、なぜかその漆喰のことだけは毎度気になってた。

何かに使えないものか。

求め​続け​なさい。そう​すれ​ば​与え​られ​ます。探し​続け​なさい。そう​すれ​ば​見つかり​ます。たたき​続け​なさい。そう​すれ​ば​開か​れ​ます。

マタイ7:7

残ってしまった漆喰の有効活用について、漆喰を使うたびに考えていたので、ついに漆喰の有効活用の方法が与えられた。

屋根のお仕事をしてなかったら、漆喰に描くという方法を知ったところで、こんなにも描きたいとはならなかったろうな。

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