藤子不二雄は二人で一人
「ドラえもん」の作者は「藤子不二雄」先生であり、「藤子・F・不二雄」先生です。
「まんが道」の作者は「藤子不二雄」先生ですが、「藤子・F・不二雄」先生では無いのです。
なにを言っているのか伝わりづらいのですが、事実そうなのです。
「藤子不二雄」は藤本弘(ふじもと ひろし)と安孫子素雄(あびこ もとお)のお二人が共同で名乗っているペンネームでした。その後コンビを解消し、F、Aと名乗ります。
「ドラえもん」を描いているのはF先生。A先生は「忍者ハットリくん」や「笑うせぇるまん」が代表作です。 そして「まんが道」はそのお二人が「まんが」に出会い漫画家になっていく姿を描く長編ドラマです。主人公が女性であればNHK朝ドラになってもおかしくない、健全な内容です。
手塚治虫の作品に出会う、作品を投稿する。そして出版社へ持ち込み。トキワ荘での仲間との日々……。
藤子不二雄A先生とF先生
まんが道は実はA先生の作品です。しかし、A先生からみたF先生の才能に嫉妬するところの描写がありながらも、F先生への敬意を感じられます。
僕は「まんが道」を通して「藤子不二雄」は二人で一人であり、「ドラえもん」を描いたのはF先生であるということを理解していきました。
実はこの頃の僕はF先生の信者であるので、A先生のことは「偽物の藤子不二雄」というくらいの酷い認識でした。
なので「忍者ハットリくん」も「笑うせぇるすまん」も読みませんでした。宗教だと分派していき、その指導者によって対立するというような構造に似ているのかもしれません。
しかし、まんが道には夢に向かって頑張っている才能あふれる少年二人が描かれています。「ドラえもん」の藤子・F・不二雄先生になるまでの大切な時間だったのだと感じられます。
「まんが道」を繰り返し読むことで、A先生への認識は「F先生の大切なご友人」という存在になりました。
そして、大切なご友人が描いた作品も大切な作品として読むようになりました。特に「藤子不二雄Aブラックユーモア短編」は本当に面白く、天才の友達は天才なのだなと感じます。
藤子・F・不二雄先生が亡くなられた際の「藤本くんは天才。藤本くんのおかげで漫画家になれた。」というインタビューを見て、二人の友情を感じました。
F先生は1996年にお亡くなりになりましたが、A先生は2022年までご存命でした。僕はこの時に「まんが道」は終了したのだと思いました。
編集部注:「ドラえもん」は1970年に「藤子不二雄」の活動期間に生まれた漫画なので「藤子不二雄」名義なのですが、のちに「藤子・F・不二雄名義」になっています。
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