大切なことはすべて、藤子・F・不二雄が教えてくれた(5)水の記憶

第一回に書いたように、母の友人の友達の家から漫画を借りパクしたことが「ドラえもん」の出会いでしたが、その「ドラえもん」が7巻と26巻です。 

7巻は皆さんご存知でしょう「帰ってきたドラえもん」が載っている巻です。USO800のおかげでドラえもんが未来から戻ってきたあの話です。

しかし、26巻にはどんな話が描かれていたか全く思い出せま……いえ、26巻に載っていた「水は見ていた」というエピソードは覚えています。

夏の暑い昼。のび太たちのいつもいる空き地に、知らない大人の男がずっとドカンに座っています。そのため、のび太たちは遊べないため家に帰ります。

のび太が帰宅後、ドラえもんがどこでもドアで映画館からビンを片手に戻ってきます。

水の記憶「水ビデオ」

「水ビデオ」という秘密道具は「水が見てきた記憶を見ることができる」というもの。ドラえもんが、映画館にこっそり吊るしておいた水のビンを入れると、その水が映画館で観てきたものが「水ビデオ」を使うことで観られます。

これのおかげで大人気でなかなか観られない映画をタダで観られる、という使い方をしています。せっかくの23世紀の秘密道具を使って、「映画をタダ観する」という、なんともセコく、今ならばNo More映画泥棒に捕まってしまうような案件です。

先生がとても映画好きだったのは他の作品でも見受けられます。

まんが道には度々二人で映画を観てくる話が出てきますし、短編集では『裏町裏通り名画館』 という『名画館』を題材にした話もあります。大長編ドラえもんの第一作「のび太の恐竜」は映画「野生のエルザ」をモチーフにしたというのはあまりにも有名です。

映画をタダで観る、いっぱい観たい、そんな素直な気持ちがこの「水ビデオ」の発想に繋がっているかもしれません。

しかし、この「水は見ていた」はただのセコい話では終わらないのです。

「水ビデオ」で映画を観た後に、のび太が「水道から出てきた水は何を見てきたんだろう」と水道の水を「水ビデオ」に入れてみようと言い出します。

おぉ、なんか学研の科学ビデオに出てきそうな展開です。さすが「すこし、ふしぎ」のSFのF先生、知的好奇心をくすぐってきます。

水を巻き戻すと、水道管から川へと行き、さらに山奥の上流へと水の見てきた景色が移り変わります。都会から田舎へ……。

そして、上流の川にある男の子がいました。その子は最初のシーンで出てきた空き地のドカンに座っていた男の人に似ています。

「にいちゃん、戻ってきてほしいな」

これで気づいたドラえもんとのび太は最初の空き地の男の人にこの「水ビデオ」を見せにいく……。

田舎から都会へ出ていった青年と映画タダ観道具がここまでエモーショナルになるとは。日常と科学とすこしふしぎ、いやぁ、最高ですね!

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