独り占めしたい“おもしろさ”
米澤穂信(よねざわほのぶ)の小説は読んだことがなかったのだが、ミステリ好きの友人が「おもしろい」と言っていたので読んでみた。
マジでおもしろかった。
読後感がなんとも言えず静かで、この気持ちはそっと心にしまっておきたいと思った。
誰に見せびらかすこともなく、ひとりでそっと抱きしめておきたい“おもしろさ”に出会ったのは久しぶりだった。
本当はこのまま独り占めしていたいのだが、私がこの本と出会うきっかけを与えてくれた友人に倣って、頑張って感想文としてまとめてみる。
ざっくりとしたあらすじ
『儚い羊たちの祝宴』は、良家の子女や良家に仕える少女たちの儚さと執着を描いた、“ラスト一行の衝撃”に徹底的にこだわった連作短編ミステリー集である。
…毎回思うのだが、このざっくりさであらすじと言えるのか?
静かで確かな成長
『儚い羊たちの祝宴』の主人公は、20歳になるかならないかの少女ばかりである。
良家の子女であったり、良家に仕える使用人であったり、妾腹の子であったり、立場は違えど全員が思春期の少女たちだ。
彼女たちはそれぞれの境遇の中で、それぞれの成長を遂げていく。
“愛情”や“執着”を隠し持ち、“冷酷さ”や“残酷さ”を静かに育んでいく。
この成長の過程を読むのがとても楽しかった。
彼女たちが清らかに歪んでいく様がたまらなく美しくて、少女好きの私の心にどストライクだったのだ。
清々しい欲望
ひとつひとつの短編の中で、それぞれの少女たちは己の欲望の形をはっきりと見せてくれる。
そのどれもが清々しいほどにまっすぐで、共感はできずともうっかり許容してしまうほどだ。
少女のあどけなさと女の頑なさ、少女の無邪気さと女の狡猾さ。
少女から女への転換期ゆえの美しさがとても魅力的だった。
さらに“ラスト一行の衝撃”が、すっきりとした読後感とその先の展開を妄想する楽しみを与えてくれるのだ。
読後の余韻に浸れる作品というのは、本当に素晴らしい。
『儚い羊たちの祝宴』は、短編としても、一冊の本としても、とても完成度の高い作品だと思う。
まとめ
なぜかやたらと堅苦しく語ってしまった。
というか「おもしろかった」の一言で完結するものを無理に言葉にするからこうなるのだ。
おもしろいものは、ただただ“おもしろい”のだ。
それだけで充分なのだ。
おもしろいよ!!