DJ AKKY の人生は選曲だ!(29)ーSTAY AT HOME & ENJOY MANGA.
勝手にコミックにサントラつけるシリーズの第3弾です。
異形。特異。そして「血」の混ざり。
今回はこちら。はい。「怪獣8号」です。
*6巻までで670万部!7巻は2022年7月4日発売予定。密かに2巻目から初版(オビ付き)を継続してゲット中。
大筋は日常的に(なぜか日本だけ頻出する)怪獣を、国家組織が組織的に退治(対峙)するという話。
この時点で、アタマの回転がお速くて、1聞いたら10理解しちゃう方は、あー、ハイハイ、武器で怪獣退治して、はいお終い!って話ね。となるかも。うん。まぁなるよね。というか読む前は、そうなってましたワタクシ。
で、8号っていう単語がひっかかり、気にはなってたけど読まなかった。
……んですが、ふとした時に、作品に呼ばれるというか引き込まれるというか、なぜかスーっと手にして読みまして。
そうしましたら、ウオオオオオオオオ⁈という猛省。超反省。
なぜ早く読まなかったんだろう。2巻待ち遠しい!そして話の展開のスピードやアングルはアレのオマージュじゃないか?混ぜ方上手すぎ!って感じで、新刊出るたびにむさぼり読みました。(僕は気に入った作品は現物を買う派です)あらすじは、怪獣退治の話といえばそうなんだけど、この怪獣が意味するのは……。
というわけで、漫画を読んだら、あの曲だ!この曲だ!と頭に浮かぶDJ AKKYの勝手にコミックにサントラつけるシリーズの第3弾です。
サントラの曲リストの前に、軽く作品の内容など。この作品の魅力は、縦軸と横軸の計算の緻密さ。にあります。
縦軸 王道のジャンプの法則。そして「定義」
縦軸である「幹」は、いわゆる少年ジャンプのテーマである「友情・努力・勝利」きっちりと踏襲してます。
ここにさらに「定義」がすごい。編集者のまとめっぷりには脱帽。そもそもの定義、そうです『怪獣』とは?これは悩ましかったろうなー。この「定義」は、作者と編集者のあいだで、多分こんなやりとりがあったんだと思います
例えば、
怪獣って何?
怪獣っていう言葉の共通認識って?
ドコまでが怪獣?
怪獣ってデカくなきゃダメ?
怪人との違いは?
宇宙人と違うの?
編集者も定義と派生する枝葉をどこまで伸ばしたら良いのかと悩まれたんだと思います。極論、定義が曖昧で読者に怪獣じゃないよねコレって言われたら、最悪は読者が離れて連載終了になる「かも」です。ここが難しいよね。
ネタバレになるので多少控えますが、設定=定義しちゃったもんがちで、例えば、突然巨人が出てきて人間を捕獲する話。とか、東京都立の専門学校があって、悪霊が人語を話すの。とか言われても何のことやらと思いますが、それは各作品の「定義」の糸がとても太いから成り立ちます。
売れるための方式と定義を縦軸に。かなり計算されてます。本作もかなり太いです。
横軸 リアリティと緩急。そして
横軸は、組織の一員としての役割。組織でいえば、怪獣退治で、なじみがあるのは科学特別捜査隊、「科特隊」(シンが付くほうだと、禍特対ね。)で、本作は日本防衛隊。現実にありそうな感じしますね。
生きるか死ぬかのミッションの中、上司の命令は絶対。完全な縦社会。怪獣と戦って勝たねばならない使命感と緊張感。
縦社会を本作では、あえて横軸においてます。登場人物の力関係。年下なのに上司とか、タメ口使う後輩とか。そこで微妙に発生する違和感とちょっとした緊張感。なんだか落ち着かない感じ。これ大事です。
「頭でわかってはいるけど体が動かない」だと怪獣に倒されてしまうよ。最悪死ぬよ。だけど、なんで怪獣退治してるんだっけ?って考えなきゃいけない局面もあるはず。
この違和感と緊張感がずっと続くと、読んでて疲れます。そうなるかと思いきや、ここにもジャンプ歴代作品からの緊張感の抜き方のオマージュ。
それに合わせて背景や登場人物など、細かく書き込む所とザッとあっさり書いちゃう所との緩急は見事。
古くは(ジャンプじゃないけど)軽井沢シンドローム(世代がバレますが)、ジャンプで言えば、奇面組シリーズの「零ちゃんぶつじょ!」、すごいよマサルさんの「だばだば」、呪術廻戦の「五条先生がお土産持参で出演するシーン(他多数)」などなど。
ちょっとした緩急で単調にならず、スイスイと読み進めることができます。
縦軸と横軸が紡ぐ怪獣像とは
縦軸と横軸が編まれて浮かび上がってくるのは、現実感。
怪獣ってひょっとしたら日常に居るんじゃないか。という、そーっと後ろや周りを見渡したくなるような感じからの……あれっ。そうか。「戦い」か……。と気づくのです。
日々学校や職場、または家庭などで過ごす際に、するべきことや解決しなければならない、そう「退治」あるいは「解決」すべき対象物の数や内容は人それぞれだと思います。
自分や周りに危害を加えたり安穏を脅かしたりする存在は必ず居る/あるんじゃないかと思うのです。
隣国かもしれないし、はたまた金曜日の16:00ごろに大量に翌週週明け月曜日締切で仕事を振ってくる上司かもしれないし、とにかく駄話しかしてこない飲み会とランチの話しか興味ない同僚かも知れないし、夜中に洗濯機廻す階上の住民かもしれないし。
自分の生活で言えば小さな規模でも、皿を洗うことだったり掃除することだったりゴミ捨てだったり……。
広い意味で、「退治」するしかないんだけど、誰もが自分自身の中に怪獣要素ってあるよね。って考えたら、何をしたら危害を与えないようにするのかとか。どうやったら安寧を維持できるのかとか、強くなるってなに?とか、とか。自分が自分でいられるような環境は自ら手を動かして解決せざるを得ない状況は誰もがありますね。
「自分の居場所は自分で作れ」=「戦え」というメッセージを「怪獣退治」のメタファーで伝えているのだと読み取りました。あまり書くとネタバレしそうなので、この辺りで。ぜひご一読を。
で、サントラ付けました。
前々回、前回と、コミックを読んで浮かんだ曲をリスト化しました。
前々回は、上條大先生の名作「Sex」1巻に対して。上條大先生ぜったいプリンス好きでしょ!というような画風で、しかも初期の!を選曲いたしました(実は最初に曲をつけたのはカセットテープ時代のかれこれ30年近く前)。楽しませていただきました。
前回は今やNetflixでもヒットし、某コラボTシャツで有名な●ニクロでは、即完売したほどの人気の「SPY×FAMILY」これら作品にどんな曲が浮かんだかは過去コラムをお読みいただければ非常に嬉しいです。
今回は、第3回目。はい。もう、ごめん。許して。プリンスしか浮かばなかった。
しかもヒット曲じゃなくて、プリンスの作品の中でもちょっと異形な感じ。聴いててちょっと落ち着かない感じ。え?これ曲?とか、過去の音楽のジャンル混ざりまくり。
プリンス自身が得意とする「いろんな要素が混ざりまくり。聴いた事あるようなないような新しい作品」。
音楽の歴史をなぞりながらの、ざっと聴くとなんだかよくわからない。でも聴き込むと色々な音がドンズバなタイミングでバランス良くなってたり、あ、これあの曲のオマージュだ。とか。とんでもなく楽器演奏的に高度な事してるとことか。曲の緩急とか。構成に共通点ありまくり。
で、プリンスもまた「自分の居場所は自分で作れ」と切にメッセージを送り続け、いわば『怪獣』と戦っていたアーティストでしたね。彼が晩年戦っていた相手はプリンスを好きな方はよくご存じかと思います。
プリンスも、またプリンスファンで最も数が多い(であろう)アラフォー、アラフィフも、「自分の居場所は自分で作る」戦いを何度も何度も繰り返し、プリンスの名前を封印し、シンボルマークに変え、頬に奴隷を意味する文字を書き、インディーズで数枚作品を発表したりと、脛や心に傷を背負いながらし続けてきました。
戦うべき相手と守るべき相手。自分に危害(実害だったり、時間を取られたり、ペースを乱されたり……)を加えるような相手への接し方。駆逐するのか、なだめるのか、味方にするのか。
それゆえに主人公32歳の苦悩が痛いほどわかる。わかるよ。わかりすぎる。そしておそらく何度もの挫折の中、本作を描き続けている40歳の作者へ応援のエールを含め、今回のコラムを送ります。